<新興国eye>カンボジア政府、国債発行に向けて法制度等を準備へ
2020/8/14 11:02
カンボジア政府は、経済財政省を中心として国債の発行・流通を目指して、新政府証券法案の検討を進めているとのことです。07年に成立した「政府証券法」を基に、最近の状況を取り込んだ新法を作成し、国債の発行につなげたいとしています。経済財政省は、この新法について、インフラ開発のための資金ニーズへの対応、予算管理強化、証券金融セクターの開発等を進め、特に国内資金ソースの活用を図ることにより、政府の資金ソースの多様化を図ることを目的としていると述べています。
カンボジアの国債発行については、日本政府の支援で18年に野村総合研究所<4307.T>が調査・提言を行っています。
同調査では、カンボジアで国債を発行した場合、期間5年もので、金利がドル建てで7%以上、リエル建て6.50%-7.75%程度と高い水準となる一方、ODA(政府開発援助)などで借り入れた場合の金利が低い(日本の円借款金利は0.01%)ため、海外からの借金を代替する意味での国債発行は必要性が低いとしています。
一方、同調査では、カンボジア政府の資金フローの安定化、国家社会保障基金(保険・年金)等の機関投資家の安定的長期運用手段の提供といった意味では、リエル建ての国債発行は意味があるものとしています。また、高度にドル化したカンボジア経済の中でリエルの使用を促進するため、カンボジアの中央銀行(NBC)が銀行貸付の10%以上をリエル建てとすることを求めており、リエル建ての国債については一定の需要があると見込んでいます。
他方、アジア開発銀行も20年4月のレポートで、カンボジア政府に国債発行を提言しています。
カンボジアでは、インフラ整備等のために海外から借り入れを行っていますが、今のところ金利が低く期間も長い譲許的借款(日本の円借款や国際機関からの借り入れ等)を中心に借り入れており、いわゆる「借金漬け」を免れています。国債を使った民間からの借り入れは、金利も高く、返済期間も短いものとなるため、政府の資金繰り安定化や金融機関のリエル使用促進といったことを目的とした限定的発行とすることが当面は必要となるものと見られます。
また、日本のように大量の国債発行を行うだけの信用力がカンボジアには欠けているため、債務の管理を徹底して行うことも重要な課題になるものと見られます。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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提供:モーニングスター社
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