<新興国eye>タイ中銀、政策金利を据え置き―市場予想通り

新興国

2020/9/24 11:29

 タイ中央銀行は23日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を過去最低の0.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は20年2月会合で0.25ポイント引き下げたあと、3月20日には緊急会合を開き、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的流行)の悪影響により、タイ経済のリセッション(景気後退)懸念が強まったとして、政策金利を0.25ポイント引き下げた。その後の3月25日の定例会合では据え置きを決めたが、パンデミックの悪影響が一段と強まった5月会合で今年3回目となる、0.25ポイントの再利下げを決めている。この結果、2月以降の利下げ幅が計0.50ポイントに達し、政策金利もゼロ金利水準となったことから、6月会合で現状維持に転換。前回8月会合を含め、据え置きは3会合連続となった。

 中銀は会合後に発表した声明文で、現状維持を決めたことについて、「年初からの金融緩和措置と流動性対策が新型コロナの感染拡大による悪影響を軽減するのに寄与しており、今後も感染拡大のピークが過ぎたタイ経済の回復やインフレ率の物価目標への収束、金融市場の安定をさせていくと見ている」との考えを示した。

 タイ経済の見通しについては、「国内で新型コロナの影響で経済成長率が落ち込むが、従来予測よりも下落幅が縮小する見通しだ。21年は外国人観光客の回復が遅れているため、景気回復は従来予測よりも緩やかになる」とした。成長率見通しについては、前回6月予測のマイナス8.1%からマイナス7.8%へと改善方向に上方修正し、21年の成長率見通しについては前回予測の5.0%増から3.6%増に下方修正した。

 インフレ見通しについては、「20年のインフレ率はマイナスの伸びとなるが、これまでの予測より小幅となる。21年は景気回復を反映して徐々に加速し、物価目標のレンジの下限近くで落ち着く」とし、前回会合時と同様、デフレ懸念後退の見方を示した。20年のインフレ率の見通しについては、前回6月予測のマイナス1.7%からマイナス0.9%へと改善方向に上方修正し、21年についても前回予測の0.9%上昇から1.0%上昇に上方修正した。

 通貨バーツの為替相場については、「ドルなど主要通貨に対するバーツの為替レートは前回会合時から下落した」としたが、「今後、もしバーツ相場が急速に上昇した場合、景気回復に悪影響を与える」と懸念を示した上で、前回会合時と同様、「為替相場の進展を注視し、適切な追加措置が必要かどうか検討していく」としている。

 今後の金融政策については、「次回以降の金融政策を検討するにあたり、タイ経済の動向やパンデミックの悪影響、これまでに導入した財政刺激策や金融安定化策、金融市場への流動性対策などの効果を注視する」とし、政策効果を見守る考えを示した。ただ、中銀は今回の会合でも、「必要に応じ、追加の金融政策手段を取る用意がある」としている。

 政策金利がすでに過去最低のゼロ金利水準に達していることから、中銀は伝統的な金利調整だけでは景気刺激の効果に限界があるとして、国債などの資産買い入れによる量的金融緩和(QE)導入やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を検討している。

 次回会合は11月18日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、iS新興国<1362.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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