<新興国eye>地域的な包括的経済連携に調印、カンボジアへの効果は未知数

新興国

2020/11/27 10:41

 11月15日、テレビ会議形式にて第4回RCEP首脳会議および協定署名式が開催され、RCEP協定が署名されました。

 地域的な包括的経済連携(RCEP)は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの計15カ国による経済連携協定です。12年11月の交渉立ち上げから8年の歳月を経て、ついに調印に至りました。交渉に参加していたインドは参加を見送っていますが、15カ国は「インドのRCEP参加に係る閣僚宣言」を発表し、引き続きインドに対してRCEPへの参加が可能であると明示しています。

 RCEP協定は、署名国15カ国で、世界のGDP(国内総生産)、貿易総額および人口の約3割、日本の貿易総額のうち約5割を占める広域な経済連携協定です。RCEPにより、地域の貿易・投資の促進およびサプライチェーンの効率化に向けて、市場アクセスが改善され、発展段階や制度の異なる多様な国々の間で知的財産、電子商取引等の幅広い分野のルールの構築が期待されます。

 日本にとっては、これまで自由貿易協定がなかった中国、韓国と経済連携協定が初めて結ばれたことに大きな意義があるものと見られます。

 カンボジアにとっての利益は、未知数のところがあります。ASEAN域内については、すでにASEAN物品貿易協定(ATIGA)があります。また、日本との間では、日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)が従前からあることに加え、カンボジアからの輸出については、日本は後発開発途上国(LDC)に対して適用される特別特恵関税制度をカンボジアにも適用しており、多くの品目の関税がすでに免除されています。

 このほか、カンボジアは、中国と二国間自由貿易協定(FTA)に調印したばかりであり、韓国とも二国間自由貿易協定の交渉中です。このため、今回のRCEP調印によって、どの程度輸出が有利になるかについては、今後の動きを見る必要があるものと見られます。

 なお、日本からカンボジアへの輸出については、35%の関税が課されていた自動車の一部について20年間で撤廃することなどが合意されています。

 RCEPは、アジアに世界最大の自由貿易地域をもたらすものであり、ついに調印に至ったことは、大きな意義があるものと見られます。カンボジアにとっても、すぐに大きな効果は望めないものの、中長期的に高度経済成長を続けるためには必要不可欠なプラットフォームになるものと期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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