<新興国eye>第21回日本カンボジア官民合同会議を開催

新興国

2021/2/26 10:56

 日本とカンボジアは、日本・カンボジア投資協定に基づき、概ね1年に1-2回の定期協議会を実施しています。今年は2月11日に第21回官民合同会議がカンボジア開発評議会(CDC)で開催されました。三上正裕日本大使とソク・チェンダ・ソピア首相補佐特命大臣兼カンボジア開発評議会事務総長が共同議長を務めました。会議には、カンボジア側は関係省庁の関係者、日本側は日本人商工会、JETRO(日本貿易振興機構)、JICA(国際協力機構)などの関係者多数が参加しました。

 なお、今回は、新型コロナ対策で、主要出席者のみ本館大会議場に入り、それ以外の参加者は、最近完成した新館の大会議室でリモート参加となりました。

 会議では、カンボジアの投資環境を改善するために、日本企業が直面する問題について、政策・法律といった大きな課題から、事務手続きの改善といった個別の課題まで、幅広く取り上げられました。優先重点案件として、労務関連(年功補償問題)、税制関連(縫製業以外への加工賃貿易の適用)、商業関連(並行輸入に関する諸問題)、電力関連(新電力料金体系の導入に対する懸念)、環境関連(環境寄付ファンドの運用適正化)、関税物流関連(ストゥンボット国境早期開設、国境通関の迅速化)、人材育成(人材開発への協力)などの分野を中心に議論されました。

 また、昨年に続き「政策提言書」が日本側からカンボジア側に提出されました。昨年と比べると、加工用機械油に対する免税措置や複数QIP(適格投資プロジェクト)取得企業の税務手続など、6課題が解決しました。今回の提言書では、新規も含めて、引き続き9課題が継続協議となっています。

 多数の問題があり、すぐには解決できないものもありますが、個別の課題について1つ1つ地道に取り組んで解決していくことが重要と見られます。また、日本側も、問題を指摘するだけでなく、解決案を提示したり、問題に詳しい専門家を派遣する等、カンボジア側と協力して対応する姿勢です。

 この会議を通じてこれまでも、カムコントロール(関税以外の国境検査)の廃止、電力料金の引下げ方針など、いくつもの問題が解決されてきています。こうした地道な取り組みが、カンボジアの投資環境の改善とカンボジアでの日系企業の発展、さらには、カンボジア経済の成長と日本・カンボジアの二国間の友好関係の深化につながることが大いに期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ