セルム「テーラーメードの人材・組織開発に注力」=加島禎二社長に聞く

株式

2021/6/1 9:45

 セルム<7367.T>は人材・組織基盤の強化、次世代リーダーの輩出を支援する人材開発・組織開発事業を手掛ける。4月6日にジャスダックに新規上場した。企業にとって経営資源としての“ヒト”の重要性が増す中、同社サービスは大きな役割を果たすことから需要は大きく、成長可能性も高い。同社の現状と今後について加島禎二社長に聞いた。

 ――御社の事業の特徴、強みは何ですか。

 「大手企業の経営人材の育成に強みを持っています。弊社では『経営塾』と呼んでいますが、顧客企業の経営トップがオーナーとなり、次期経営者を中・長期的に育成する取り組みです。同業他社はその会社独自のプログラムやコンテンツをベースに、各顧客向けに少しカスタマイズして提供するスタイルですが、弊社は1300人の外部タレントの中から顧客ニーズに応じた最適なタレントを選定し、彼らと一緒に顧客に最適なソリューションをデザインし提供しています。次期経営人材の育成は通常、部長や課長、若手層など複数の階層に対して5-10年かけて段階的に育成する施策となります。そのため、一度ご縁をいただくと長期にわたりお取引させていただくケースが多いというのも大きな特徴といえます」

 「また、次期経営人材は人材育成において最重要施策となるため、経営塾で実績を頂いた顧客からは高い信頼を獲得し、さまざまなご相談をいただくようになり、その結果、各顧客との取引がどんどん広がっていくというビジネスモデルです。弊社は大手企業に特化しビジネスを展開してきたため、大手企業における実績と事例ベースのナレッジが豊富に蓄積されていることから、顧客からさまざまな相談をいただくプラットフォームのような存在になっていると自負しています」

 ――現在の事業環境をどう見ていますか。

 「近年までM&A(企業の合併・買収)やグローバル化など、各企業のコア事業が大きく変化するというよりも、事業の売り買いや、既存のビジネスモデルを新しい市場(海外)に展開する、出島でイノベーションを追求するという取り組みが成長戦略の主体となっていました。しかし、コロナ禍やDX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な進展によって、企業はコア事業も含めた、あらゆる事業において価値の再定義が求められています。そのためには、企業中心主義や製品中心主義から、顧客中心主義への転換や、未知の領域・分野での積極的な探索行動などが必要であり、組織や人材の価値観やもののとらえ方の変革が必要となります。企業はいよいよその内側の改革、つまり組織及び人材の質的変容(トランスフォーメーション)のニーズが高まることが予想され、新たな事業機会の創出につながると期待しています」

 ――足元の動向はいかがですか。

 「前3月期はコロナ禍の影響を大きく受け、かなり厳しい結果となりました。しかし、研修サービスのオンライン化をはじめ、自社サービスのDXを積極的に推進したことによって、下期以降は順調に回復しており、今期、足元は想定以上に良好な状況です。コロナ禍によって短期的には研修の延期・キャンセル、人材開発予算の一時的な縮小などネガティブな影響も受けましたが、多くの顧客企業は既にアフターコロナを見据え、新たな人材開発投資に舵(かじ)を切っており、DX人材育成やオンライン1on1メンタリングなど、新たな顧客ニーズがどんどん生まれてきている状況です」

 ――将来のビジョンを教えてください。

 「前々期は0%だった研修のオンライン比率が前期は80%を超える結果となりました。しかし、これはまだまだ新型コロウイルスナの感染状況に応じて随時対応した結果にすぎません。例えば、研修は長きにわたり、受講者が時間とコストを掛けて全国から集まり、1回当たり9-18時(8時間)と長時間実施することが慣習となっていました。しかしオンライン化の浸透によって『時間』と『空間』の制約がなくなりました。対象者が世界各地から研修に参加し、1時間の研修を8回実施することも可能になりました。つまり、研修施策を企画する際のオプションが一気に増えたということです。これは研修に限らず、コンサルティングも同様です。弊社では、今後、これらのさまざまなオプションについて顧客とともに可能性を模索し、新たな研修やコンサルティングの価値を創造していきたいと考えています」

提供:モーニングスター社

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