<新興国eye>ポーランド中銀、予想外の大幅利上げ―政権に屈したとの見方も

新興国

2021/10/7 11:13

 ポーランド中銀は6日の金融政策委員会で、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.40ポイント引き上げ、0.50%とすることを決めた。利上げは12年5月以来9年5カ月ぶり。市場予想は0.10%の据え置きだった。ロンバート金利と再割引金利、公定歩合もそれぞれ1.00%、0.51%、0.52%に引き上げた。預金金利は0.00%に据え置いた。このほか、市中銀行が中銀に預ける自国通貨ズロチ建てと外貨建ての準備預金の法定預金準備率(SRR)をいずれも0.50%から2.00%に引き上げた。

 中銀は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による経済への悪影響を抑制するため、20年3月17日の緊急会合で5年ぶりに0.50ポイントの大幅利下げを決め、その後も5月まで3会合連続で引き下げた。利下げ幅が計1.40ポイントに達したことを受け、6月会合で据え置きに転じ、21年に入っても前回9月会合まで14会合連続で金融緩和政策を継続していた。

 市場では今回の唐突な利上げを全く予想していなかった。これまで中銀のアダム・グラピンスキー総裁は利上げ開始の条件として強い景気回復と良好な労働市場、インフレ上昇の3点を挙げていたため、これらの条件が満たされる今秋に利上げを開始すると予想していた。今回の会合でも中銀は声明文で、労働市場について、「民間企業セクターの平均雇用は依然としてパンデミック前の水準をやや下回っている」とし、景気についても「今後の数四半期は、秋に懸念されるパンデミックの感染拡大の経済に与える影響について依然として不透明感がある」と、先行きの見通しに対するリスクを指摘している。

 また、グラピンスキー総裁は前日(5日)の経済フォーラムで、最近の急激なインフレ上昇は一時的だとし、23年まで政策金利を据え置く考えを示していた。今回の会合での利上げ転換について、インフレ加速に警戒感を強めている政府、特に、マテウシュ・モラヴィエツキ首相が中銀の金融政策会合の直前に利上げを求めていただけに、市場では中銀が政権に屈したとの見方を強めている。

 中銀は利上げに転換した理由について、声明文で、「インフレを中期の物価目標に抑えるため」としている。前回会合時では、「最近のインフレ加速は一時的な側面がある」として現状維持を決めたのとはすっかり様変わりした。

 最新の9月のインフレ率は前年比5.8%上昇と、前月を上回った。中銀はその上で、インフレ見通しについて、「現在、インフレを上昇させている供給サイドの要因は22年には弱まるが、世界的なエネルギーと農産物の物価上昇は、今後数四半期、インフレを加速させる可能性がある」「一段の景気回復と労働市場の好転が見込まれ、高いインフレ率は当初予想されていたよりも長く続く可能性があり、中期的にインフレ率が物価目標を上回リスクが生じる」とし、インフレ悪化懸念を示した。

 通貨ズロチの為替相場については、前回会合時と同様、「金融緩和政策の経済支援効果を高めるため、市場介入を実施する。市場介入のタイミングと規模は市場の状況に応じて判断する」との方針を据え置いた。中銀はズロチ高を抑制するため、市場介入を行ってきており、市場ではこの介入継続方針は中銀のタカ派イメージを和らげるためとみている。

 次回の会合は11月3日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>

提供:モーニングスター社

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