<新興国eye>ハンガリー中銀、政策金利を1ポイント引き上げ―利上げ継続へ

新興国

2022/8/31 9:10

 ハンガリー中央銀行は30日の金融理事会で、インフレを抑制し、通貨フォリント安の進行を阻止するため、主要政策金利であるベース金利(準備預金への付利金利)を1ポイント引き上げ、11.75%とすることを決めた。利上げ幅は市場の予想通りだった。

 また、中銀は他の政策金利も同率の1ポイント引き上げた。ベース金利の上下幅(コリドー)の下限を示す翌日物預金金利を11.25%に、上限を示す翌日物有担保貸出金利と7日物有担保貸出金利を各14.25%に、それぞれ引き上げた。新金利は31日から適用される。

 中銀はコロナ禍が沈静化し、経済活動の再開に伴ってインフレが加速し始めたことを受け、21年6月会合でベース金利だけを約10年ぶりに0.3ポイント引き上げ、他の金利は据え置いた。同7月から同11月16日の会合まですべての政策金利を同率引き上げ、同11月30日の緊急会合ではベース金利以外の金利を引き上げた。ウクライナ戦争の勃発(2月24日)以降もインフレ抑制のため、ベース金利の引き上げを継続。直近では6月の定例会合での1.85ポイントの大幅利上げ後も7月12日の臨時会合で2ポイントの大幅利上げを決めており、これで利上げは16会合連続。利上げ幅は計11.15ポイントに達した。

 中銀は追加利上げを決めたことについて、声明文で、前回7月会合時と同様、「長期化するコモディティ(国際相場商品)価格の上昇やエネルギー価格の高騰、欧州の干ばつ被害の影響により、外部からのインフレ圧力がさらに高まる。秋にはインフレ率がさらに上昇する見通しだ」とし、強いインフレ懸念を示した上で、「インフレ目標を達成するためには、第2ラウンド効果(賃金上昇によるインフレ加速)の影響を防ぎ、インフレ期待を抑制することが重要だ」としている。

 7月のインフレ率(全体指数)は前年比13.7%上昇(6月は同11.7%上昇)、コアインフレ率も同16.7%上昇(同13.8%上昇)と、それぞれ伸びが急加速。中銀では秋にはインフレ率(全体指数)は20%近くにまで加速すると予想している。

 ただ、中銀は、前回会合時と同様、「インフレ率は秋にピークに達し、その後、緩やかなペースで下落すると予想される」との見方を維持した。「23年以降、世界経済の成長が鈍化するにつれて、世界のインフレ率はコモディティ価格やエネルギー価格とともに低下。ハンガリーでも年末から外部のインフレ圧力が低下する」と予想している。中銀では24年前半には物価目標(3%上昇)に収束すると見ている

 金融政策の見通しについては、前回会合時と同様、「インフレのさらなる上昇と持続的なインフレリスクは引き締め(利上げ)サイクルの継続を正当化する」とし、その上で、「今後、インフレ率が持続的に物価目標の水準で安定し、インフレ見通しの上ブレ・下振れの両リスクが金融政策のタイム・ホライズン(時間軸)で均衡するまで利上げサイクルを続ける」とし、利上げ継続の考えを強調している。市場では、政策金利は22年末までに約14%に達し、その後、23年上期から利下げに転換する可能性が高いと見ている。

 また、中銀は、今回の会合で、利上げ効果を高めるため、今秋から金融システムから流動性を吸収し、短期市場金利を金融政策スタンスと合致させるため、3つの措置を決めた。1つ目は預金準備率の引き上げ(現行の1%から5%に引き上げ)、2つ目は定期的な手形売出オペ(入札)の実施、3つ目は長期の預金ファシリティの導入。市場ではこれらの措置は今回の大幅な利上げとともに通貨フォリント高を狙ったものと見ている。通貨フォリントが急落し、過去最安値を付けていることが背景。通貨安は輸入インフレを押し上げ、インフレ全体を加速させるからだ。

 次回の金融政策決定会合は9月27日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>

提供:モーニングスター社

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