<新興国eye>カンボジア初の国債 近く発行手続き開始へ

新興国

2022/9/16 8:57

 8月16日、カンボジア経済財政省は、初の国債発行を9月から実施すると発表しました。起債総額は、1兆2195億リエル(3億ドル相当:約414億円)です。額面は100万リエル(約250ドル)です。償還期間は、1年、3年、5年の3種類となります。発行額は、期間1年が2000億リエル、3年が8000億リエル、5年が2000億リエルとなっています。

 これまでのIPOや社債発行に比べると金額が大きいため、発行は分割して実施される予定で、期間1年は1000億リエルずつ2回、3年は2000億リエルずつ4回、5年は1000億リエルずつ2回に分けて発行されます。各発行は、4週間に1度の頻度とするとしています。金利(固定金利)については、各回毎の入札によって定めるとのことです。金利支払については、発行後6カ月毎となります。なお、優遇措置として、国債の金利に課される源泉徴収税は、50%減免されます。また、キャピタルゲイン課税は免税となります。

 国債の発行は、カンボジア政府の資金繰りの安定化、国家社会保障基金(保険・年金)等の機関投資家の安定的長期運用手段の提供といった意義があると見られます。また、高度にドル化した経済の中でリエルの使用を促進するため、カンボジアの中央銀行(NBC)が銀行貸付の10%以上をリエル建てとすることを求めており、リエル建ての国債については金融機関でも一定の需要があると見込まれます。

 カンボジアでは、インフラ整備等のために海外から借り入れを行っていますが、今のところ金利が低く期間も長い譲許的借款(日本の円借款や国際機関からの借り入れ等)を中心に借り入れており、いわゆる「債務の罠」を免れています。国債を使った民間からの借り入れは、金利も高く、返済期間も短いものとなるため、政府の資金繰り安定化や金融機関のリエル使用促進といったことを目的とした限定的発行とすることが当面は必要となるものと見られます。また、日本のように野放図に国債発行を行うだけの信用力がカンボジアには欠けているため、債務の管理や国債によって調達した資金の使途制限等を徹底して行うことも重要な課題になるものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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