JSR、半導体市場と医薬市場という巨大市場の中で技術が渇望される分野に焦点

株式

2022/9/30 8:50

 JSR<4185.T>のウェブ説明会に、同社の取締役執行役員CFO(最高財務責任者)の江本賢一氏が出演。自社の概要や成長戦略について語った。

 JSRは自動車用タイヤなどに使われる合成ゴムの国産化を目指し、半官半民で設立された国策企業「日本合成ゴム」としてスタートした。祖業であるエラストマー事業を22年4月1日付でENEOSに譲渡し、現在のコア事業は、半導体材料やディスプレイ材料などを開発・製造・販売するデジタルソリューション事業と創薬支援サービスなどを提供するライフサイエンス事業となっている。このほか、自動車の内装などに使われるABS樹脂を取り扱う合成樹脂事業も展開する。

 デジタルソリューション事業の中でも主力である半導体材料事業では、半導体を製造している企業に、製造工程で重要な材料を提供している。同社の製品群では、先端フォトレジストと呼ばれるEUV、ArFが約3分の1の売上構成を占め、これらの材料におけるグローバル市場でトップシェアを保有している。

 一方、ライフサイエンス事業は、バイオ医薬品の候補薬をスクリーニングするサービスや、候補薬の臨床試験でハイレベルな製造プロセスを構築するサービスを提供している。例えば、がんの新薬の候補の中から優れたものをスクリーニングするサービスを展開することで、医薬品開発の期間短縮や、効果的な医薬品の開発、製造に貢献している。また、バイオ医薬品は生物の細胞を使うことから不純物も混じってしまうが、JSRが独自開発した材料によって薬となる部分を効率的に精製する技術を持っている。

 デジタルソリューション、ライフサイエンス両事業において、グローバルに拠点を構えて事業を展開していることも同社の強みのひとつだ。また、デジタルソリューション事業とライフサイエンス事業は一見異なる分野のようだが、「高分子技術と精密製造技術で培った高い技術を原点としており、事業構造も似ている」(江本氏)という。

 市場規模でいえば、22年時点で約5500億ドルと言われる半導体市場は、継続的に成長しており、JSRの主要事業であるフォトレジスト市場も半導体市場と同様、成長が期待される。また、バイオ医薬品市場の規模も巨大だが、JSRが展開するCDMO事業はその中でも技術が渇望される分野に焦点を絞っている。

 半導体市場も医薬品市場も、非常に高い成長が今後も期待されている。半導体は性能が向上するのに伴い、小型化・省電力化も進む。一方、ライフサイエンス事業については、医薬品開発にコストと時間がかかるが、効率化が重要な課題となっている。こういった市場において、江本氏は、「半導体材料では先端分野で高い市場シェアを獲得し、またライフサイエンス事業においては複雑なバイオ医薬品について開発や製造をサポートする技術力を持っていることが強みになる」とした。

 中期経営方針としては、半導体材料、ライフサイエンスをコアとして、これらの分野に集中的に投資をし、両事業とも売上成長10-20%と非常に高い成長を見込む。売上成長とコア営業利益は、最終年度の25年3月期に600億円以上と、過去最高益の更新を目指す。またEBITDAも将来には1000億円を視野に入れる。

 今後の成長に向けては、自社の研究開発拠点だけではなく、大学との提携によるオープンイノベーション、ベンチャー企業とのコラボレーションにより、研究開発の幅を広める。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)にも配慮。2050年に向けて、グリーンハウスガス排出の実質ネットゼロを掲げて、それに向けたプログラムを展開していく。

 最後に株主還元についても言及。事業の成長投資を優先しながら、中期的に50%程度の総還元性向を想定する基本方針のなか、22年3月期には年間配当を60円から70円に増配。今後も安定配当を基本としつつ利益の成長に合わせた増配に取り組んでいく」(江本氏)としており、23年3月期も同額を計画する。また、4月には上限300億円とする自己株式の取得を発表しており、株主還元が同社にとって重要な事項であることを改めて説明した。

提供:モーニングスター社

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