<新興国eye>ルーマニア中銀、予想通り0.50ポイント追加利上げ―利上げ継続の可能性

新興国

2022/11/9 9:03

 ルーマニア国立銀行(中銀)は8日の金融政策決定会合で、主要政策金利である1週間物レポ金利を0.50ポイント引き上げ、6.75%とすることを決めた。市場の大方の予想通りだった。一部では前回10月会合と同じ0.75ポイントの利上げを予想していた。

 また、中銀は主要政策金利の「プラス・マイナス1ポイント」のレンジの上限としている、市中銀行に資金供給するためのロンバート型貸出金利も7.75%に、下限にあたる資金吸収のための預金金利も5.75%に、いずれも同率引き上げた。

 中銀が金融システム内の流動性を適切に管理するため、市中銀行が中銀に預ける預金準備率については、自国通貨建ての預金準備率を8%、外国通貨建ての預金準備率も5%に、それぞれ据え置いた。

 中銀はコロナ禍による国内経済への悪影響を緩和するため、20年3月20日の緊急会合で政策金利を0.50ポイント引き下げて以降、21年1月まで計4回引き下げ、利下げ幅が計1.25ポイントに達したため、21年3月から据え置きに転じた。しかし、最近の急速なインフレ上昇を受け、同10月会合で18年5月以来3年5カ月ぶりに利上げを再開、これで10会合連続の利上げとなる。利上げ幅は計5.50ポイントに達した。

 また、0.50ポイント超の大幅利上げは4月以降、7会合連続で、08年の世界的な金融危機以来14年ぶりの速いペースとなっている。ただ、利上げ幅は7月が1.00ポイント、8月と10月はいずれも0.75ポイント、今回は0.50ポイントと、上げ幅が縮小傾向にある。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げを決めたことについて、前回会合時と同様、「ウクライナ戦争の勃発(2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁措置が景気見通しに対する不確実性とリスクの主要な要因となっており、また、消費者の購買力や信頼感に悪影響を及ぼし、中期的なインフレ見通しに影響を与えている」とし、追加利上げを決めたとしている。

 インフレ見通しについて、中銀は、「(今回発表された)11月四半期インフレ報告書の最新の経済予測によると、インフレ率は22年末にかけて緩やかに上昇する」とし、短期的にはインフレが加速すると見ている。9月のインフレ率は前年比15.88%上昇と、8月の同15.32%上昇や6月の同15.05%上昇を上回り、伸びが加速し続けている。

 ただ、中銀は、「インフレ率は22年10-12月期にピークに達したあと、エネルギー価格の上限設定や世界的な供給サイドのショックが緩和することにより、減速に転じる可能性がある」とし、その上で、「インフレ率は24年上期に1ケタ台となり、その後、経済予測の期間内、物価目標(1.5-3.5%)のレンジの上限をやや超えた水準で推移すると見られる」とし、中期的にはインフレ懸念は後退するとしている。

 今後の金融政策の見通しについて、中銀は前回会合時と同様、「持続可能な経済の達成につながる方法で、中期的にインフレ期待を抑制し、政策金利の引き上げを通じ、貯蓄を促し、インフレ率を物価目標に戻すことを目指す」とし、景気支援とインフレ抑制の両立を目指す考えを改めて強調。その上で、前回会合時と同様、「中期的な物価安定の達成に必要なあらゆる手段を講じる用意がある」とし、追加利上げの可能性を示唆している。

 市場ではルーマニア経済が今年10-12月期と来年1-3月期に伸びが減速、またはマイナス成長に落ち込む可能性があるため、景気に配慮し、政策金利が7.00%のピークに達した時点で利上げサイクルを終了すると予想している。中銀は景気の見通しについて、「最新のデータは、22年7-9月期と同10-12月期の経済活動がウクライナ戦争の激化と厳しさを増す対ロ制裁の下で、ほぼ停止することを示している」とし、警戒感を強めている。

 次回の金融政策決定会合は来年1月10日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>

提供:モーニングスター社

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