<新興国eye>タイ中銀、0.25ポイント引き上げ―小幅利上げ継続を示唆

新興国

2022/12/1 8:58

 タイ中央銀行は11月30日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を0.25ポイント引き上げ、1.25%とすることを全員一致で決めた。利上げ幅は市場の大方予想通りだった。一部では現状維持を予想していた。

 中銀は20年6月から22年6月まで16会合連続で政策金利を据え置いたが、通貨バーツ安とインフレ上振れリスクが強まったとして、8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換した。これで利上げは3会合連続となり、利上げ幅は計0.75ポイントに達した。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げを決めた理由について、「現在のタイ経済とインフレの見通しを踏まえると、段階的な金融政策の正常化(小幅利上げ)が依然として金融政策にとって適切な道筋であると判断した」としている。

 市場では国内景気の力強い回復によるインフレ上振れリスクや、米国の大幅積極利上げ継続によるドル高の進行で、タイからの資金流出懸念でバーツが下落するリスクがあることから、バーツ安阻止のためにも追加利上げを決めたと見ている。この点について、中銀は声明文で、「バーツの対ドル相場は主要国の金融政策(利上げ継続)やマクロ経済政策を巡る思惑でかなり不安定となっている」とし、警戒感を緩めてないない。

 景気の見通しについては、中銀は、「タイ経済の回復の勢いが引き続き強まっている。観光と個人消費が今後も原動力となり、世界景気の減速がタイ経済に与える悪影響を緩和するのに役立つ」とした上で、22年の成長率見通しを3.2%増(従来予想は3.3%増)、23年は3.7%増(同3.8%増)、24年は3.9%増と予想している。ちなみに今年7-9月期GDP伸び率は前年比4.5%増と、約1年ぶりの高い伸びとなっている。

 インフレ見通しについては、中銀は、「23年のインフレ率(全体指数)は国内のエネルギー価格の上昇により、従来予測よりも高くなるが、23年末までには物価目標に戻ると予想される」とした。その上で、全体指数の見通しについては、22年は7-9月期にピークに達し、6.3%上昇になると予想、従来予想を据え置いた。23年は3.0%上昇(従来予想は2.6%上昇)、24年は2.1%上昇と予想、24年末までに物価目標に収束するとした。他方、コアインフレ率の見通しは、22年は2.6%上昇(同2.6%上昇)、23年は2.5%上昇(同2.4%上昇)、24年は2.0%上昇と予想。全体指数とコア指数のいずれも23年を従来予想よりやや高めに修正した。

 今後の金融政策について、中銀は、前回9月会合時と同様、「政策金利は長期的に持続可能な成長と一致する水準まで徐々にゆっくりと(“measured”)正常化されるべき」とした上で、「世界経済を取り巻く不確実性の高まりを考慮し、経済成長とインフレの見通しが現在の評価から変化した場合、金融政策の正常化(利上げ)のタイミングと規模を調整する用意がある」とした。市場では景気回復の勢いが引き続き強く、23年のインフレ見通しを従来予想より高目に引き上げたことから、中銀は景気支援にも配慮するため、引き続き小幅利上げを継続すると見ている。

 次回会合は23年1月25日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、

 上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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