<新興国eye>インド準備銀行、賛成多数で0.35ポイント追加利上げ―今後も利上げ継続へ
2022/12/8 8:54
インド準備銀行(中銀)は7日の金融政策決定会合で、インフレ加速を阻止し、景気を支援するため、流動性調節ファシリティ(LAF)の主要政策金利であるレポ金利(中銀の市中銀行への翌日物貸出金利)を0.35ポイント引き上げ、6.25%とすることを5対1の賛成多数で決めた。1委員が利上げに反対票を投じた。
市場では利上げペースの減速に焦点が集まっていた。大方の予想は0.35ポイント、一部でより小幅な0.1ポイントや0.25ポイントが予想されていた。
中銀はコロナ禍の深刻な悪影響がインド経済に及ぶ恐れがあるとして、20年の3月27日の緊急会合で1年1カ月ぶりに利下げ(0.75%)に転換。5月22日の緊急会合でも2会合連続の利下げ(0.40%)を決め、利下げ幅は計1.15%ポイントに達した。その後は22年4月まで11会合連続で据え置きに転じたが、インフレの急加速を受け、5月4日の臨時会合で0.40ポイントの緊急利上げに踏み切った。これで5合連続の利上げとなり、利上げ幅は計2.25ポイントに達した。6.25%の金利水準は18年以来4年ぶりの高水準。ただ、利上げ幅は今回の会合では8月と前回9月会合時の各0.50ポイントから縮小した。
中銀はレポ金利の引き上げに伴い、金融システムから余剰流動性を吸収するため、金利の上下幅(コリドー)についてもLAFのリバースレポ金利(市中銀行の中銀への預金金利)も同率引き上げ、6.00%に、市中銀行が資金ひっ迫時に中銀から政府債を担保に資金を借りることができる流動性供給スキーム「MSF(マージナル・スタンディング・ファシリティー)」と公定歩合もそれぞれ同率引き上げ、6.50%とした。
追加利上げを決めたことについて、中銀は声明文で、前回会合時と同様、「インフレ期待を抑制し、コアインフレの高止まりを打破、第2ラウンド効果(賃金上昇によるインフレ加速)の影響を抑えるため、金融緩和のさらなる調整(追加利上げ)が必要だと判断した」としている。
シャクティカンタ・ダス総裁も声明文で、「インフレ率は依然として高い。世界的な要因(ウクライナ戦争など地政学的緊張や不安定な金融市場の動向)がインフレ先行きに不確実性をもたらし続けている」とした上で、「インドのGDP成長率は依然、底堅く、インフレは緩やかになると予想されるが、インフレとの戦いは終わっていない。高水準のコアインフレと食品価格の高騰が依然続いている」と警戒感を】高めている。
インドでは法律により、インフレ率が3四半期連続で物価目標の上限を上回った場合、是正措置を取る必要がある。10月のインフレ率は前年比6.8%上昇と、前月(9月)の7.4%上昇から伸びが減速したが、依然、物価目標(4.0%上昇プラス・マイナス2.0%ポイント)の上限(6.0%上昇)を上回っている。インフレ見通しについて、ダス総裁は、「今後12カ月間、インフレ率は物価目標を上回り続ける」とし、22年度は6.7%上昇と予想している。景気見通しについては、原油価格を1バレル100ドルと想定した上で、22年度を6.8%増と予想し、前回会合時点の予想(7.0%増)を下方修正した。
今後の金融政策について、ダス総裁は、「MPC(金融政策委員会)は6委員のうち、4人(前回は5人)の賛成多数で、成長を支えながらインフレ率が物価目標内に留まることを確実にするため、金融緩和スタンスからの撤退(金融引き締めへの転換)に引き続き注力することを決めた」とし、利上げを継続する考えを明らかにした。
市場では今回の利上げペースの減速にもかかわらず、中銀が金融緩和スタンスからの撤退(利上げ)に固執したことからタカ派(インフレ重視の強硬派)スタンスが強まったと見ており、中銀が今後、インフレ圧力を高めることなく安定成長を可能にする短期金利の水準で金融政策が目指すべきといわれる、いわゆる、中立金利を目指す「中立」スタンスへの転換、すなわち、利上げサイクルの終了時期が先送りされたと見ている。
市場では来年2月の次回会合でも0.25ポイントの利上げが継続されると見ている。短期金融市場では23年1-3月期に政策金利は約6.50%でピークに達するとの見方を織り込んでいる。
次回の金融政策決定会合は23年2月6-8日に開かれる予定。
<関連銘柄>
インドNIF<1678.T>、インドブル<2046.T>、インドベア<2047.T>
提供:モーニングスター社
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