<新興国eye>第25回日本カンボジア官民合同会議、税制の改善を求める

新興国

2023/3/10 9:57

 日本とカンボジアは、日本・カンボジア投資協定に基づき、概ね1年に2回の定期協議会(官民合同会議)を実施しています。2月21日に第25回官民合同会議がハイブリッド方式で開催されました。植野篤志日本大使とソク・チェンダ・ソピア首相補佐特命大臣兼カンボジア開発評議会(CDC)事務総長が共同議長を務めました。会議には、カンボジア側は関係省庁の関係者、日本側は日本人商工会、JETRO、JICA等の関係者等、多数が参加しました。

 この合同会議では、カンボジアの投資環境を改善するために、日本企業が直面する問題について、政策・法律といった大きな課題から、事務手続きの改善といった個別の課題まで、幅広く取り上げられてきています。今回の会議では、電力関連(カーボンニュートラル)、税制関連(クメール語が求められる補助文書の範囲、非居住者取締役に対するみなし課税、VAT還付の遅延)、物流関連(タイ・ベトナム国境通関の迅速化、CNSWの推進:通関手続きの電子化・簡素化)、プロジェクト(産業人材育成)等の分野を中心に報告・議論されました。この他、労務関連(最低賃金、年功補償)、投資関連(電力料金低減・停電モニタリング、並行輸入に関する諸問題)等についても継続協議としています。

 また、例年通り「政策提言書」が日本側からカンボジア側に提出されました。昨年と比べると、1件の課題(駐在員事務所の給与税の納付方法の確認)が解決しました。今回の提言書では、引き続き11課題が継続協議となっています。

 多数の問題があり、すぐには解決できないものもありますが、個別の課題について一つ一つ地道に取り組んで解決していくことが重要と見られます。また、日本側も、問題を指摘するだけでなく、解決案を提示したり、各省庁担当者と詳細な個別協議を行う等、カンボジア側と協力して対応する姿勢です。この会議を通じてこれまでも、カムコントロールの国境検査廃止、電力料金の引下げ方針等、いくつもの問題が解決されてきています。こうした地道な取り組みが、カンボジアの投資環境の改善とカンボジアでの日系企業の発展、更には、カンボジア経済の成長と日本・カンボジアの二国間の友好関係の深化に繋がることが大いに期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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