<新興国eye>マレーシア中銀、予想に反し政策金利を0.25ポイント引き上げ―景気回復に自信深め

新興国

2023/5/8 8:57

 バンク・ネガラ・マレーシア(中銀)は先週(3日)の金融政策決定会合で、景気回復に自信を深める中、将来のインフレリスクと金融的不均衡リスクへの先制的な措置として、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を0.25ポイント引き上げ、3.00%とすることを決めた。市場の大方の据え置き予想に反し、サプライズとなった。

 中銀は22年5月会合で、インフレ抑制のため、18年1月25日以来、4年4カ月ぶりに利上げに転換、同11月まで4会合連続で利上げした。利上げ幅が計1.00ポイントに達したため、今年1月会合で22年3月以来、5会合(10カ月)ぶりに据え置きに転換。前回3月会合でも2会合連続で金利を据え置いた。今回の利上げにより、政策金利は19年11月(3.00%)以来、3年半ぶりにコロナ禍前の水準に戻った。

 中銀は会合後に発表した声明文で、利上げに踏み切ったことについて、「予想通り、コスト要因が緩和、ここ数カ月のインフレ率(全体指数)は低下傾向にある」とした一方で、「国内景気の見通しは依然、強靭性を示しているため、金融緩和の度合いをさらに正常化することが適切と判断した。これより、コロナ禍から景気を回復するための金融刺激(金融緩和)策を撤回した」とし、金融政策を正常化するための金利調整であることを強調している。

 前回会合では、中銀は、「過去の金融政策が経済に遅れて及ぶ影響を考慮し、これまでの政策金利の調整(4会合連続の利上げ)の影響を引き続き見守りたい」とし、また、景気見通しの下振れリスクも考慮、据え置いたが、前回会合から2カ月が経過し、インフレが緩和する一方で、景気回復が一段と強まったため、今回の利上げ調整により、金融緩和状況を正常化させた。

 インフレ見通しについて、中銀は、「インフレ見通しに対するリスクは上向き」としたが、「全体指数とコア指数はいずれも23年に2.8-3.8%上昇と、緩やかになると予想される。コア指数は需要が堅調に推移する中、高水準にとどまるが、燃料補助金や既存の価格統制が部分的にインフレ上昇圧力を抑制し続ける」と見ている。ただ、市場では今回の利上げは3月のコア指数が前年比3.8%上昇と、6カ月連続で全体指数を上回っていることや、今後、政府が燃料補助金や価格統制を解除することも考慮したと見ている。

 また、中銀は景気見通しのリスクについて、「国内の金融環境は消費や投資活動に悪影響を及ぼすような過度な引き締めの兆しはなく、金融仲介にとっては良好な状況が続いている。国内景気の見通しに対するリスクは均衡している」と楽観的に見ている。その上で、中銀は、「22年の強い経済状況から23年1―3月期にはさらに景気が拡大する。輸出の減速が予想されるが、内需が景気をけん引する」としている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「引き続き、国内のインフレと持続可能な経済成長に対するリスクのバランスをとるよう(金利調整)する」としたが、「マレーシア経済の継続的な強さを考慮、また、将来の金融的不均衡(株価バブルなど資産価格の急上昇)リスクを防ぐため、金融政策のスタンスが適切になるようにする」とし、また、「現在の金利水準は金融政策スタンスはやや緩和的であり、引き続き景気を下支えしている」とし、金融政策の決定要因として、インフレリスクに加え、新たに金融的不均衡を追加した。

 これを受け、市場では中銀が新たな利上げサイクルに向かう可能性が出てきたと見ている。他方、世界的な利上げサイクルが今年半ばに終了する見通しのため、インフレと金融的不均衡のリスクへの先制的措置として、中銀は今後、今年末まで政策金利を据え置くとの見方に分かれている。

 次回の会合は7月6日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ブルサKLC<1560.T>、アセアン50<2043.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>

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