<新興国eye>カンボジア:バケン浄水場ようやく稼働、プノンペンの水不足解消に向けて

新興国

2023/7/7 15:57

 6月19日、カンボジアの首都プノンペンに上水を供給するバケン浄水場(第1期)の完成を記念する式典が開催されました。式典には、フン・セン首相、チャン・プラシッド工業科学技術革新大臣他多数が参加しました。

 バケン浄水場は、第1期は19万5000立方メートル/日の処理能力で、総工費は2億4700万ドル(約350億円)です。フランス開発庁(AFD)、欧州投資銀行(EIB)、EU等からの支援を受けて建設されました。設計と建設はフランス企業ビンチ・コンストラクション・グランズ・プロジェクツ(VGGP)が受注しています。更に、第2期は、同じく19万5000立方メートル/日の処理能力で2024年第1四半期の完成を見込んでいます。総工費は1億3440万ドル(約190億円)の予定です。

 プノンペン上水道公社(PPWSA)の既存施設の現在の処理能力は、プンプレック浄水場(15万立方メートル/日)、チュロイチョンワ浄水場(13万立方メートル/日)、チャムカーモン浄水場(5万2000立方メートル/日)、ニロート浄水場(26万立方メートル/日)等で、合計約64万立方メートルです。今回のバケン浄水場の完成で処理能力は約83万5000立方メートルに拡大します。

 プノンペンの人口増加と不動産開発の急速な進展で、今年前半の乾期にはプノンペン郊外で水不足の状況となり、給水車も出動していました。ようやくバケン浄水場第1期が完成し一息つくことができた状況です。しかし、プノンペンの都市化は予想以上のスピードで進んでおり、上水需給のひっ迫が懸念される状況です。まずは、バケン浄水場(第2期)の予定通りの完成が期待されます。

 続いて、バケン浄水場の第3期については、フランスの支援を受けてフィージビリティ調査が実施されており、19万5000立方メートル/日の処理能力で建設される見込みで、2027~2028年ころの完成が期待されます。日本の息の長い支援で「プノンペンの奇跡」とまで言われたカンボジアの上水事業が今後ともしっかりとプノンペンの人々の生活を支えていくことが期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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