<新興国eye>インド準備銀行、予想通り金利据え置き―5委員が引き締めスタンスを支持

新興国

2023/12/11 9:10

 インド準備銀行(中銀)は先週末(8日)の金融政策決定会合で、インフレ上昇を抑制し、景気を支援するため、流動性調節ファシリティ(LAF)の主要政策金利であるレポ金利(中銀の市中銀行への翌日物貸出金利)を6.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀はレポ金利の据え置きに伴い、金融システムから余剰流動性を吸収するため、金利の上下幅(コリドー)についてもLAFのリバースレポ金利(市中銀行の中銀への預金金利)を6.25%、市中銀行が資金ひっ迫時に中銀から政府債を担保に資金を借りることができる流動性供給スキーム「MSF(マージナル・スタンディング・ファシリティー)」と公定歩合をそれぞれ6.75%に据え置いた。

 中銀はインフレの急加速を受け、22年5月4日の臨時会合で0.40ポイントの緊急利上げに踏み切り、今年2月会合まで6会合連続で利上げを実施。利上げ幅は計2.50ポイントに達した。4月会合から据え置きに転じており、これで据え置きは5会合連続。6.50%の金利水準は18年以来4年ぶりの金融引き締め水準となっている。

 また、中銀は今後の金融政策のスタンスについて、6委員中、大半の5委員(前回会合時も5人)が前回10月会合時と同様、「引き続き、成長を支援しながら、インフレが徐々に物価目標に収束するよう金融緩和の撤回(金融引き締め)に引き続き注力する」とし、利上げサイクルの終了宣言は時期尚早とし、一時休止の判断を示した。ただ、ジャヤント・R・ヴァルマ委員だけが今回の会合でも態度保留とした。

 金利据え置きを5会合連続で決めたことについて、中銀は声明文で、前回会合時と同様、「これらの決定はインフレ率を中期の物価目標である2-6%上昇(中央値4%上昇)の範囲内に戻し、経済成長を支援するという中銀の目的と合致する」としたが、「コア指数は低下傾向にあるが、全体指数は依然不安定で、インフレ期待の抑制を妨げる可能性がある」、また、「食品価格の変動」(上昇)や、不透明な国際環境(地政学的リスク)による原油価格と金融市場の価格変動はインフレリスクとなっており、ディスインフレへの道を維持する必要がある」とし、金利据え置きを決めたとしている。

 今後の金融政策について、中銀は、「インフレ期待の抑制を着実にし、過去の累積的な利上げのインフレ抑制効果をより強めるため、積極的なインフレ抑制策を継続する必要がある」とし、金融引き締めを維持する考えを示している。

 シャクティカンタ・ダス総裁も声明文で、インフレ見通しについて、「短期的には11月と12月に食品価格の上昇により、インフレ率が上昇するリスクがある」と懸念を示した上で、「引き続き厳重に警戒し、必要に応じ、適切な政策措置を講じる用意がある。金融政策はインフレ抑制的でなければならない」と指摘。市場では中銀はインフレリスクを警戒、政策金利を長期にわたり、据え置く可能性が高いと見ている。

 足元のインフレ状況は、10月は前年比4.9%上昇と、8月の同6.8%上昇や7月の同7.4%上昇を下回り、低下傾向にあるが、まだ、物価目標の中央値を上回っている。中期見通しについては、23年度を5.4%上昇(前回会合時も5.4%上昇)と予想。第3四半期(10-12月期)は5.6%上昇(同5.6%上昇)、第4四半期(24年1-3月期)は5.2%上昇(同5.2%上昇)、また、24年度第1四半期(4-6月)を同5.2%上昇(同5.2%上昇)と予想、いずれも据え置いた。

 ただ、23年度の経済成長率の見通しを前回会合時の6.5%増から7.0%増に引き上げ、市場予想(6.7%増)を上回った。

 次回の金融政策決定会合は24年2月6-8日に開かれる予定。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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