<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―景気支援で銀行貸出拡大へ

新興国

2024/3/21 9:09

 インドネシア中央銀行(BI)は20日の理事会で、インフレ抑制と通貨ルピア相場を安定させるため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を高水準6.00%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.25%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.75%と、いずれも据え置いた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、同2月会合で7カ月ぶりに金利据え置きに転換、同9月会合まで8会合連続で据え置いた。同10月会合で9カ月ぶりに利上げに踏み切ったが、同11月会合で再び据え置いており、これで据え置きは5会合連続。6.00%の金利は約5年ぶりの高水準となっている。

 今後の金融政策について、中銀は通貨ルピア相場を安定させるため、政策金利を高めに維持する一方で、景気を支援するため、企業や家計部門への銀行信用(貸出)を一段と拡大する方針を示した。

 中銀は声明文で、前回2月会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、金融(市場流動性)やマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)、決済システムのポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とした上で、「企業や家計への銀行融資を拡大するため、緩やかなマクロプルーデンス政策を継続する」と述べている。

 これまで中銀は景気支援策として、23年7月会合で、一般の商業銀行やシャリア銀行などを対象とした流動性強化政策(KLM)を決め、同10月1日に銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げたが、今回の会合では、「今後、このKLMを一段と強化する」としている。

 ルピア相場の見通しについて、中銀は、「23年12月時点に比べ、対ドルで2.02%低下したが、他のアジア通貨よりも良好」とした上で、「今後、海外資金が戻ることにより、ルピア相場は安定し、強まる傾向になる」とし、ルピア相場の下落懸念は緩和したと見ている。海外からの資金流入について、中銀はインドネシア経済の見通しが改善していることや、魅力的な投資収益に対する投資家の期待感が背景にあると見ている。

 今回の会合で金利据え置きを決めたことについて、中銀は会合後に発表した声明文で、前回2月会合時と同様、「ルピア相場を安定させる政策を強化するため、また、インフレ率を24年の物価目標である前年比1.5-3.5%上昇(中央値2.5%上昇)の範囲内に抑制するための先制的かつ将来を見据えた措置だ」としている。

 インフレについて、中銀は、「2月のインフレ率は前年比2.75%上昇と、前月(1月)の同2.57%上昇を上回ったが、物価目標のレンジ(1.5-3.5%上昇)内に収束した」、また、「コアインフレ率も主に(政府が法律で決める)管理物価の低下により、2月は前年比1.68%上昇(1月も同率)となった」とし、その上で、前回会合時と同様、「24年のインフレ率は1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲内に抑制される」と、インフレの先行きを楽観的に見ている。

 また、景気見通しについては、中銀は、「主要貿易相手国からのパーム油や鉄鋼、石炭の需要の減少により、財輸出は堅調にはならないが、サービス、特に観光業は堅調に成長する」とし、その上で、今回の会合でも24年の成長率見通しを4.7-5.5%増に据え置いた。23年10-12月期GDP伸び率は前年比5.04%増と、前期の同4.94%増を上回り、23年全体で5.05%増となっている。

 市場では今後の金融政策について、中銀は24年上期まで金利据え置きのスタンスを維持すると見ている。利下げサイクルの開始については、ペリー・ワルジヨ総裁はルピア相場の安定とインフレの低下を確実にするため、「しばらく政策金利を据え置き、24年下期に利下げの余地があるか判断する可能性が高い」と指摘している。ただ、市場ではインドネシア中銀の利下げペース(利下げ幅)はFRBのペースに合わせるため、利下げ回数も少なく、小幅利下げになると予想している。

 次回の会合は4月23-24日に開かれる予定。

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 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

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