<新興国eye>チェコ中銀、賛成多数で0.5ポイント利下げ―2委員は0.75ポイント下げ主張

新興国

2024/3/22 8:42

 チェコ国立銀行(中銀)は20日の金融政策決定会合で、インフレ率の急低下を受け、政策金利の2週間物レポ金利を5対2の賛成多数で0.50ポイント引き下げ、5.75%とすることを決めた。市場の大方の予想通りだった。ただ、2委員が0.75ポイントの利下げを主張、反対票を投じた。

 中銀はインフレ加速を受け、21年6月から22年6月まで9会合連続で利上げを実施。利上げ幅が計6.75ポイントに達したことから同8月から据え置きに転じ、23年11月まで11会合連続で据え置いた。しかし、同12月会合で20年5月以来3年7カ月ぶりに利下げに転換。これで利下げは3会合連続、利下げ幅も計1.25ポイントに達した。5.75%の金利は依然、1999年9月(6.00%)以来、24年6カ月ぶりの高水準。

 中銀は声明文で、3会合連続で利下げを決めたことについて、「インフレ率は、年初時点で物価目標の2%上昇まで低下、物価の安定が再び回復した」とし、インフレ低下を受け、追加利下げを決めたとしている。

 ただ、中銀は前回会合時と同様、「インフレ見通しには若干のインフレリスクがある。これらのリスクが顕在化すると、今後数四半期にインフレ率が物価目標の許容レンジの上限(3%上昇)に向かって乖離することになる」とし、利下げペースを一段と拡大することを避けた。その上で、今後の金融政策についても、「中銀は金融引き締め政策を継続し、さらなる利下げの可能性に引き続き、慎重に取り組む必要がある」としている。

 中銀は将来の金利水準ついて、前回会合で、「政策金利は今期(1-3月期)、そして来期(4-6月期)も最新の経済予測の標準シナリオで予測される水準(それぞれ5.5%と4.0%)を上回ることになる」とし、急速な利下げを避けたい考えを示している。また、先週、エバ・ザムラジロワ副総裁も0.50ポイント上回る利下げはすでに過去1年間でユーロに対し、5.2%下落している通貨コルナ相場に悪影響を与えるとして否定的だ。

 また、次回5月会合での追加利下げについて、中銀は前回会合時と同様、「さらなる金利引き下げのペースは主にディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)の持続性や為替相場の動向、財政政策の経済への影響、雇用市場と国内外の需要の動向に依存する」とし、当面は段階的な利下げを進める方針。ただ、中銀は、「インフレ率が予測通りに低下しない場合、依然として制限的な水準で、金利引き下げサイクルをいつでも一時停止、または終了する」との文言を残している。

 インフレ率は22年秋のピーク以降、著しく低下、全体指数は22年9月の18.0%上昇から1月に2.3%上昇に急低下、2月には従来予想(2.8%上昇)を下回る2.0%上昇に達した。コア指数も14.7%上昇から2月には2.8%上昇に低下した。これを受け、中銀は、前回会合時で使った「インフレとの戦いは終わっていない。インフレが物価目標近くで安定するまでインフレとの戦いを続ける」との文言を削除。その代わりに、「インフレ見通しに対するリスクと不確実性はやや上向き」との文言にトーンダウンした。

 中銀ではインフレ率(全体指数)は24年に2.6%上昇、25年に2.0%上昇と予想。ただ、コア指数は24年に2.9%上昇に加速すると見ている。インフレ見通しに対するリスクについて、中銀は前回会合時と同様、「インフレ期待が抑制されなくなる恐れや、雇用市場のひっ迫による賃金上昇がインフレ上振れリスクとなる」としている。

 中銀は景気見通しについて、「24年1-3月期の実質GDPはプラス成長が継続する見通し。インフレ低下に伴い、実質家計所得の伸びは回復しつつある」としている。中銀の経済予測では24年は0.6%増、25年は2.4%増を予想している。

 市場では政策金利が年末までに3.00%を下回ると予想している。チェコ経済がEU(欧州連合)の中で唯一、コロナ禍前の生産水準に戻っていないため、今後数カ月のインフレ上ブレリスクよりも実体経済をより重視していると見ている。

 次回の会合は5月2日に開かれる予定。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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