<新興国eye>タイ中銀、賛成多数で金利据え置き―利下げ主張は1委員に減少
2024/6/13 8:56
タイ中央銀行は12日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を2.50%に据え置くことを6対1の賛成多数で決めた。金利据え置きは大方の予想通りだった。ただ、今回も全員一致ではなく、1委員(前回4月会合時は2委員)が0.25ポイントの利下げを主張、反対票を投じた。
中銀は通貨バーツ安とインフレ上振れリスクが強まったとして、22年8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換。23年9月会合まで8会合連続で利上げを実施、利上げ幅は計2.00ポイントに達し、2.50%の金利は13年以来11年ぶりの高水準となっている。23年11月会合で17カ月ぶりに据え置きに転換、今回の会合で4会合連続の据え置きとなった。
スレッタ・タビシン首相は景気刺激のための利下げ開始を急ぐよう中銀に圧力をかけ続けている。しかし、中銀は今回の会合でも政治圧力に屈せず、据え置きを決めた。タイ経済は政府の5%成長目標に対し、過去10年間の平均成長率は2%増弱と、低迷しているが、中銀は政府の財政刺激策(140億ドルの現金給付の決定)が財政赤字を拡大、金融市場の混乱、ひいては景気リスクを高めることを懸念している。
この点について、中銀は声明文で、前回会合時と同様、「大半の政策委員は現在の政策金利はタイ経済が潜在成長力に向かって進み、マクロ金融の安定を維持するのに役立っている」としている。これは中銀が経済成長の見通しを妨げる主な要因は外的要因と構造的要因で、利下げにより、景気リスクが解決されないという判断しているのに対し、政府は景気循環的な景気減速と見て利下げを要求、両者の確執が続いている。このため、市場では利下げ合意はまだ先と見ている。
市場ではタイ経済とインフレの見通しが改善していることから、今後、政府からの利下げ圧力が緩和、利下げ開始は早ければ24年後半、または25年からと予想している。また、今回の会合で利下げ支持が前回会合時の2委員から1委員に減ったことにより、中銀のハト派スタンスが弱まり、早期に利下げに動き出す可能性は低下したと見ている。
1委員の利下げ支持について、中銀は声明文で、「構造的な問題によるタイ経済の潜在成長率の低下を反映、借り手の債務返済負担を部分的に軽減するため、0.25ポイントの利下げを支持した」としている。市場ではタイ経済とインフレの見通しが改善したことから、政府からの利下げ圧力が緩和、今後2年間、政策金利を据え置く余裕ができたとの見方もある。
中銀は今後の金融政策について、「大半の委員は、政策金利は長期的にはマクロ金融の安定を促進しながら、成長とインフレ見通しの改善と整合していると考えている」としたが、「今後、輸出と製造業の回復をめぐる不確実性や政府の景気刺激策の影響を今年後半、注視する必要がある」とし、今回の会合でもタイ経済の見通しに対する不確実性を指摘、景気への配慮を強調。その上で、「経済動向、特に輸出の回復と政府の措置を注視、今後の金融政策を審議する際には成長とインフレの見通しを考慮する」としている。
最新の経済予測によると、24年の成長率見通しを2.6%増、25年は3.0%増を予想。また、24年の外国人観光客の訪問者数を3550万人と予想している。
インフレ見通しについては24年を0.6%上昇と予想したが、25年は1.3%上昇に加速するとしている。中銀は、「インフレ率は低下から上昇に転じており、ディーゼル関連補助金と特定の生鮮食品の過剰供給の影響が徐々に解消されるにつれて上昇する」とし、デフレは一過性と判断。その上で、中銀は、「インフレ率は24年10-12月期までに物価目標(1-3%上昇)に収束する」と予想している。
次回会合は8月21日に開催される予定。
<関連銘柄>
タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、
提供:ウエルスアドバイザー社
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