(英国)英国中央銀行(BOE)金融政策委員会

次回の発表日時:2024-05-09 20:00:00

BOE(イングランド銀行)に設置され、イギリスの政策金利などを決める。BOE総裁、副総裁、委員6名の計9名で構成されている。16年まで毎月開催していたが、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)にならい、17年から年8回に減らした。政策決定日の2週間後に議事録が公表される。

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  • 2024-03-22 10:30:01

    英中銀、8対1の賛成多数で金利据え置き―1委員が利下げ主張(2)

    <チェック・ポイント>
    ●BOE、「金利をいつまで現在の水準に維持すべきか検討続ける」

    ●ベイリー総裁、「利下げ段階でないが、事態は正しい方向に進んでいる」

    ●市場、利上げ支持の委員が消え6月利下げ確率を50%超織り込む

    <声明文>

     BOEは声明文で、金利据え置きを決めた理由について、インフレリスクが残っている一方で、景気後退懸念が緩和していることを指摘している。インフレリスクについて、BOEは、「紅海を通る海上輸送の混乱を含む中東紛争の動向による重大なインフレリスクは依然として残っている」とし、、中東情勢の悪化によるエネルギー価格の上昇という地政学的リスクを挙げインフレ再加速の懸念を示した。

     その上で、BOEは、「インフレ率は比較的急激に低下し続けている。制限的な金融政策スタンスが実体経済の活動を圧迫し、雇用市場の緩和をもたらし、インフレ圧力を抑制している。しかし、それにもかかわらず、インフレ率は高止まりし続けている」と、懸念を示している。

     BOEはインフレ要因となる賃金の上昇率を注視しているが、今回の声明文では、「賃金の伸びが鈍化しており、今年の給与支払い額が若干減少すると予想している。コスト上昇を物価に転嫁するのがさらに困難になっている」と指摘。

     また、2月のインフレ率が前年比3.4%上昇と、1月と12月の同4%上昇から伸びが急減速したことを受け、BOEは今回の会合で、「インフレ率は今年4-6月期に物価目標の2%上昇をやや下回る」とし、前回会合時の「2%上昇に低下」から改善方向に上方修正した。

     ただ、それ以降のインフレ見通しについては、2月のサービス価格が6.1%と、依然、高止まりしているため、BOEは、「2月予測ではインフレ率(全体指数)は7-9月期と10-12月期に再び上昇すると予想される」とし、引き続き、年後半からのインフレ上昇リスクを警戒している。

     他方、景気見通しについては、BOEは、「英国のGDPは23年下期にマイナス成長となったが、24年上期はプラス成長に回復する見通し。企業調査でも経済活動は改善の見通しを示している」と、楽観的な見方を示している。前回会合では「金融政策の制限的なスタンスが実体経済の活動を圧迫し、雇用市場の弱体化につながっている。失業率は上昇する可能性がある」と、景気後退懸念を強めていた。

     英国経済は23年7-9月期と同10-12月期に前期比で2期連続のマイナス成長となり、理論上のリセッション(景気失速)となったが、21日発表の最新の3月S&Pグローバル総合PMI(購買担当者景気指数)が52.9と、前月の53に続き、リセッションから回復が続いていることが確認されており、BOEにとっては追い風となっている。

     また、BOEは24年春の予算案についても声明文で、「財政措置により今後数年間でGDP水準が約0.25%増加する可能性がある。潜在的供給力が押し上げられ、その結果、需給ギャップ、ひいてはインフレ圧力への影響が弱まる」と楽観的に見ている。

    <制限的スタンス>

     市場が注目した今後の金融政策のフォワードガイダンス(金融政策の指針)について、BOEは、前回会合時と同様、「23年秋以降、インフレ率が物価目標の2%上昇を超えて高止まりするリスクが消えるまで、金融政策を長期間抑制する必要があると判断している」とした上で、「金融政策は中期的にインフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、十分長い期間にわたって、十分制限的であり続ける必要がある」との文言を残した。

     ただ、今後の利下げ開始の可能性について、BOEは前回会合時と同様、「インフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、経済指標に従って金融政策を調整する用意がある」とし、また、「政策金利をどれくらいの期間、現在の水準に維持すべきかについて検討を続ける」とし、今後の利下げ開始に向けて準備を進めるハト派のスタンスを維持した。市場では政策変更に必要なインフレの高止まりに関するデータの解釈を巡って、委員の意見が異なるため、検討が必要になっていると見ている。

    <ベイリー総裁>

     ベイリー総裁は金融政策決定の発表後の会見で、据え置き決定について、「ここ数週間、インフレが低下しているというさらに心強い兆候が見られた。金利を5.25%に据え置いたのはインフレ率が物価目標の2%上昇にまで低下し、その水準にとどまることを確実にする必要があるためだ」とした上で、「まだ金利を引き下げられる段階には達していないが、事態は正しい方向に進んでいる」と述べ、利下げ開始に向かって前進しているとの見方を示している。

     次回の会合は5月9日に開かれる予定。

    提供:ウエルスアドバイザー社 

  • 2024-03-22 10:24:01

    英中銀、8対1の賛成多数で金利据え置き―1委員が利下げ主張(1)

    <チェック・ポイント>
    ●BOE、「金利をいつまで現在の水準に維持すべきか検討続ける」
     
    ●ベイリー総裁、「利下げ段階でないが、事態は正しい方向に進んでいる」
     
    ●市場、利上げ支持の委員が消え6月利下げ確率を50%超織り込む
     
     
     
     
     イングランド銀行(英中銀、BOE)は21日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を5.25%に据え置くことを9委員中、8対1の賛成多数で決めたことを明らかにした。据え置きは市場の予想通りだった。

     金利据え置きは5会合連続。BOEの利上げサイクルは21年12月から今年8月までの14会合連続で止まったが、現行の5.25%の金利水準は依然、08年2月以来、約16年ぶりの高水準となっている。

     市場では今回の会合で9人の政策委員のうち、タカ派とハト派の割合が前回2月会合時からどう変化するかに注目していた。

     今回の会合では、9人の政策委員のうち、タカ派(インフレ重視の強硬派)のアンドリュー・ベイリー総裁ら8委員(前回は6人)が据え置きを支持した一方で、ハト派のスワティ・ディングラ委員が前回に続き0.25ポイントの利下げを主張、BOEのハト派姿勢が明確になった。注目された、前回会合でインフレ高止まりの長期化懸念から利上げを主張した超タカ派のジョナサン・ハスケルとキャサリン・マンの2委員が据え置きに回ったことにより、利上げ支持の委員が消えた。

     MPCが金融政策決定で意見が割れたのは22年9月会合以降、これで13会合連続となり、金融政策を巡り、分裂状態が続いているが、今回の会合では利下げ開始決定に至らなかったものの、利下げ転換含みの据え置き支持が圧倒的多数を占めたことを受け、市場ではBOEは利下げに対し寛容的になってきており、6月利下げ開始に舵を切ったと見ている。短期金融市場では会合後、6月利下げ開始の確率を50%超織り込んだ。

     英株市場では6月利下げ観測が強まったため、FTSE100種総合株価指数が一時、1.5%上昇。外為市場でもポンド相場が対ドル・ユーロで、一時0.3-0.4%下落した。

     これまで市場では利下げ開始までにはBOEは再び、インフレが上昇すると懸念、金融政策を十分な期間にわたって制限的に保つ必要性を指摘すると予想。6月か8月までに利下げリサイクルが始まり、年末までにあと1回(1回0.25ポイント換算)の利下げを予想していた。しかし、会合後、金融先物市場は年末までにあと2回の利下げを織り込んだ。ただ、市場の一部ではサービスインフレが依然高止まりしているため、この低下のタイミングを考慮すると、8月開始の可能性が高いと見ている。その場合でも8月以降、各会合ごとに利下げが実施され、24年末には1ポイント(0.25ポイント換算で4回)の利下げを予想している。

    提供:ウエルスアドバイザー社 

  • 2024-02-02 10:42:01

    英中銀、賛成多数で金利据え置き―1委員が利下げ支持に転換

    <チェック・ポイント>
    ●ベイリー総裁、「金利をいつまで現在の水準に維持すべきか検討続ける」
     
    ●ベイリー総裁、「フォワードガイダンスから金利上昇のバイアスを削除した」
     
    ●BOE、最新経済予測で物価目標の達成時期を25年から26年に1年延期
     
     
     
     
     イングランド銀行(英中銀、BOE)は1日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を5.25%に据え置くことを9委員中、6対3の賛成多数で決めたことを明らかにした。据え置きは市場の予想通りだった。

     金利据え置きは4会合連続。BOEの利上げサイクルは21年12月から今年8月までの14会合連続で止まったが、現行の5.25%の金利水準は依然、08年2月以来、約16年ぶりの高水準となっている。

     今回の会合では、9人の政策委員のうち、タカ派(インフレ重視の強硬派)のアンドリュー・ベイリー総裁ら6委員が据え置きを支持した一方で、超タカ派のジョナサン・ハスケルとキャサリン・マンの2委員(前回は3委員)がインフレ高止まりの長期化懸念から利上げを主張したが、ハト派のスワティ・ディングラ委員が前回の据え置き支持から利下げ支持に転換、三派に分かれた。ディングラ委員は金融政策の影響が景気とインフレに及んでくるまでのタイムラグを考慮し、直ちに利下げすべきと主張した。

     BOEは声明文で、利上げせず、金利据え置きを決めた理由について、英国経済の景気後退懸念が高まっていることを指摘している。BOEは、「金融政策の制限的なスタンスが実体経済の活動を圧迫し、雇用市場の弱体化につながっている。失業率は上昇する可能性がある」とし、景気後退懸念を強めている。

     また、BOEは金利を据え置いた要因として、インフレ上昇リスクが続いていることを挙げている。声明文で、「インフレ率はやや急激に低下した」としたが、「インフレ率は今年4-6月期に一時的に物価目標の2%上昇にまで低下するが、その後、7-9月期と10-12月期に再び上昇すると予想される」とし、年後半からのインフレ上昇リスクを指摘している。

     ベイリー総裁も金融政策決定の発表後の会見で、早期利下げの可能性について、「インフレ率は3月までに3%上昇、4-6月には約2%上昇に低下する可能性があるが、今年末までに再上昇すると予想されている。春にインフレ率が物価目標に戻れば我々の仕事が終わるというほど単純ではない」と述べ、4-6月に物価目標に戻ってもインフレ低下の持続性を示すものではなく一過性とし、早期利下げには慎重な姿勢を示した。

     また、同総裁は今回の会合で、ハト派のディングラ委員が利下げ支持に転換、三派に意見が割れたことに関し、「どれくらいの期間金利を現在の水準に維持すべきか検討し続ける」とした上で、据え置き期間の長さについても、「賃金上昇率や失業率など今後入手可能な経済データ次第だ」とし、また、「地政学的な緊張が高まっており、紅海航路の輸送量が大幅に減少している」とし、インフレリスクを注視する考えを示した。

     ただ、同総裁は、BOEの次の金融政策のステップが利上げか、利下げかについて、「金利上昇のバイアスを削除した」とし、ハト派寄りの姿勢を示した。また、総裁は、「金利の次の動きはおそらく上昇するという以前のガイダンスを撤回したことは良いニュースだ」、さらに、「金融政策がどの程度、制限的であるべきかという問題からどの程度の期間、制限的なスタンスを維持すべきかに問題が変わった」とも述べ、今後、利下げに向けた準備に入ることを示唆した。

     次回の会合は3月21日に開かれる予定。

    提供:ウエルスアドバイザー社 

  • 2023-12-15 11:03:02

    英中銀、6対3で金利を据え置き―3委員は0.25ポイント利上げを再度主張

    <チェック・ポイント>
    ●ベイリー総裁、「インフレとの戦いの道のりはまだまだ遠い」

    ●ベイリー総裁、市場の24年早期利下げ期待を「時期尚早」と否定

    ●BOE、10-12月期とそれ以降数四半期の成長率を「横ばい」と予想
     
     
     
     
     BOE(イングランド銀行、英中銀)は14日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を5.25%に据え置くことを9委員中、6対3の賛成多数で決めたことを明らかにした。据え置きは市場の予想通りだった。

     金利据え置きは前回11月会合に続き、3会合連続。BOEの利上げサイクルは21年12月から今年8月までの14会合連続で止まったが、現行の5.25%の金利水準は依然、08年2月以来15年半ぶりの高水準となっている。

     BOEは声明文で、金利据え置きを決めた理由について、英国経済の景気後退懸念が高まってることを指摘している。BOEは、「7-9月期GDP伸び率が前期比横ばいとなったあと、10月のGDP伸び率は前期比0.3%減となった。10-12月期とそれ以降の数四半期の経済成長率はほぼ横ばいになることが予想される」とし、景気後退懸念を強めている。最新のBOEの11月経済予測では7-9月期GDP伸び率は前期比0.1%増を予想していたが、横ばいに下方修正された。

     また、BOEは金利を据え置いた要因として、インフレ上昇リスクが続いていることを挙げている。声明文で、「最も可能性が高い予測はインフレ率が25年末までに物価目標の2%上昇に戻るということだが、このインフレ見通しに対するリスクは上振れになっている」とし、物価目標の達成が25年末になるとの判断を据え置いている。

     BOEはインフレ上ブレリスクとして、「原油と天然ガスの先物価格は下落しているものの、中東情勢を考慮するとインフレの上ブレリスクは依然として存在する」とし、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘激化による地政学的リスクを挙げている。

     また、BOEは政府の23年秋の予算編成による景気刺激効果について、「今後数年間、GDP伸び率を約0.25%押し上げると推定されるが、インフレ圧力への影響は軽微」と見ている。その上で、「インフレ率は年明けごろも現在の水準(10月時点で前年比4.6%上昇)近くで推移すると予想される」とし、物価目標を2倍超上回る状況が続き、「インフレ指標は依然、高止まりする」と、懸念を示している。

     BOEの最新の11月経済予測では24年7-9月期まで金利が据え置かれ、26年末までに4.25%に低下すると予想している。しかし、金融市場では24年5月から利下げに転換、24年末までに計4回の利下げにより、4.25%に低下すると予想、積極的な利下げ期待が高まっており、BOEとの温度差が際立っているのが実情。

     ベイリー総裁も会見で、インフレとの戦いについて、「まだまだ道のりは遠い」とし、時間がかかるとの見通しを示した。また、景気支援のため、早期の利下げ転換の必要性についても最近のインフレ低下の進捗にもかかわらず、「利下げを検討し始めるのは時期尚早だ。我々はさらなるインフレ低下を見る必要がある」また、「今の政策金利はピークに達したと保証することはできない」と述べ、市場との温度差は縮まらなかった。このタカ派発言を受け、ポンド相場は対ドルで急騰した。

     だが、市場ではBOEが今回の声明文で指摘したように、過去の累積的な金融引き締めの効果により、労働市場のひっ迫感が緩和し、インフレが低下していること、さらには、景気後退懸念が強まっているため、政策金利はすでにピークに達したと見ている。今後、早期利下げ転換は必要で、BOEがタカ派スタンスを続ける根拠はないと見ており、今回の据え置き決定後も早ければ24年5月、または6-8月の利下げ転換の見方を変えていない。利下げ幅も24年末までに計3回(0.75ポイント)、さらに25年半ばまでに計3回(0.75ポイント)の利下げを想定している。

     次回の会合は24年2月1日に開かれる予定。

    提供:ウエルスアドバイザー社 

  • 2023-11-06 08:39:01

    英中銀、6対3で政策金利を据え置き―3委員が利上げ主張

    <チェックポイント>
    ●英リセッション懸念の高まりやインフレ率の鈍化を指摘
     
    ●中東情勢によるインフレ上ブレも警戒
     
    ●市場、現行の金利水準が長期化すると予想
     
     
     
     
     BOE(イングランド銀行、英中銀)は2日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を5.25%に据え置くことを決めた。9委員のうち6人が据え置きを支持し、残り3人は0.25ポイントの利上げを主張した。据え置きは2会合連続。前回会合では5対4と意見がほぼ拮抗していた。
     
     BOEは声明文で、英国の7-9月期GDP(国内総生産)が前期比横ばいと予想されていることを念頭に、金利据え置きを決めた理由について、英国経済のリセッション(景気低迷)懸念が高まっていることをあげている。雇用市場についても不確実性が高まったとしており、「経済活動の低迷により、雇用の伸びは23年下期にかけて鈍化する可能性が高く、8月予測よりも大幅に鈍化する」と指摘している。
     
     金利据え置きのもう一つの理由は最近のインフレ低下だ。9月と7-9月期のインフレ率(全体指数)はいずれも前年比6.7%上昇とインフレ率は物価目標の2%上昇を大きく上回っているものの鈍化傾向にあり、「23年10-12月期に4.75%上昇、24年1-3月期に4.5%上昇、24年4-6月期には3.75%上昇になると予想される」と、インフレ低下見通しが強まったことを挙げている。一方で、中東情勢の悪化を受け、エネルギー価格の上昇によるインフレの上ブレリスクがあるとも指摘した。
     
     ベイリーBOE総裁は会合後の会見で、現在の金利水準が長期にわたる可能性を示唆しているが、市場ではBOEの金融引き締めが行き過ぎているとの見方もあり、数年以内に物価下落と潜在的な景気後退につながるとの懸念から、すぐに金利を引き下げるべきとの声も少なくない。現在の英国経済は住宅ローン融資が減少、企業の債務が増え、倒産するケースが増えている。
     
     市場では今後、BOEは過去の累積的な利上げサイクルにもかかわらず、インフレ水準が9月時点で前年比6.1%上昇と、米国の同3.7%上昇やユーロ圏の同2.9%上昇と比較して、低下ペースが遅れているため、インフレ率が物価目標(2%上昇)を超える状態を容認すると見ている。また、英国のインフレ率は25年まで物価目標に収束しない見通しのため、政策金利は今後、長期にわたり、据え置かれると予想している。世界の政策金利は長期的に4.5-5.5%上昇のレンジで落ち着くと見られているが、英国はレンジの上限近くとなる。
     
     次回の会合は12月14日に開かれる予定。
     

  • 2023-09-22 08:57:01

    英中銀、5対4で政策金利を据え置き―4委員は利上げ主張

    <チェック・ポイント>
    ●英8月CPIで市場の見方は拮抗
     
    ●APFの減額ペースを加速
     
    ●市場は据え置き期間の長期化の可能性を指摘
     
     
     
     
     BOE(イングランド銀行、英中銀)は21日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を5.25%に据え置くことを決めた。9委員のうち据え置きを支持したのは5人で、残りの4人は0.25ポイントの利上げを主張した。市場の事前予想は分かれていたが、利上げがやや優勢だった。
     
     市場の予想は利上げと据え置きでほぼきっ抗。前日20日発表の英8月CPI(消費者物価指数)が前年比6.7%上昇と、前月の6.8%上昇から鈍化したため、利上げサイクルを一時停止するとの見方が強まった一方、依然として高い水準であることから、もう一段の利上げが必要との見方も根強かった。
     
     BOEの声明文では、今回の据え置きについて8月のCPIの伸びが鈍化したことに言及したほか、「金融引き締め政策が雇用市場や実体経済の勢いに何らかの影響を与える兆候が増えている」としており、リセッション(景気低迷)への懸念にも配慮したとみられる。
     
     今後の金融政策についても、「金融政策は中期的にインフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、十分長い期間にわたって、十分制限的である必要がある」とした一方、「さらなる持続的なインフレ圧力の証拠が見られれば、さらなる金融引き締めが必要となる」とし、追加利上げの可能性があることを示唆した。
     
     また、量的金融引き締め措置として、9月20日時点で7590億ポンドとなっている金融資産買い取り制度(APF)の国債保有額を23年10月から24年9月までの1年間で6580億ポンドまで削減することを全員一致で決めた。従来の減額ペースは800億ポンドだったが、1000億ポンドに減額ペースを加速させる。
     
     市場では、インフレ要因である賃金の伸びが加速する恐れがあるとして、今回の利上げ見送りが物価上昇につながると警戒する声や、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)よりも据え置きの期間が長期化するとの見方もある。
     
     次回の会合は11月2日に開かれる予定。
     

  • 2023-08-04 10:15:01

    英中銀、政策金利を0.25ポイント引き上げ―2委員が0.5ポイントの引き上げ主張

    <チェック・ポイント>
    ●物価目標を上回る状況続き、利上げ必要と判断―景気リスクには配慮
     
    ●24年と25年のインフレ見通しを引き上げ―インフレ収束は25年以降と
     
    ●25年の成長率を引き下げ―リセッションは回避できるとの見方
     
     
     
     
     BOE(イングランド銀行、英中銀)は3日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を0.25ポイント引き上げ、5.25%とすると決めた。市場予想通りだったが、9人の委員のうち、1人が据え置きを、2人が0.5ポイントの大幅利上げを主張した。利上げは14会合連続。金利水準は08年2月以来15年半ぶりの高さとなる。
     
     BOEの声明文によると、6月のインフレ率が前年同月比7.9%上昇(5月は8.7%上昇)となるなど足元でインフレ率は収まりつつあるものの、物価目標の2%上昇を大きく上回る状況が続いているとして、利上げが必要と判断したとしている。
     
     一方、利上げ幅が0.25ポイントにとどまったことについては、「金融スタンスが経済活動の重しとなっている」とし、景気リスクに配慮したこともうかがわせた。景気リスクについては、弱い経済指標を踏まえて景気の回復力を見極める必要があるとして、明言を避けた。
     
     今回の会合でBOEが公表した最新の8月経済予測によると、インフレ見通しは23年で5%上昇と、前回5月予測時点と変わらなかったが、24年は2.5%上昇(前回予測は2.25%上昇)、25年は1.5%上昇(同1%上昇)と予想、24年と25年の見通しを引き上げた。25年まで物価目標に収束しないと見ている。
     
     景気見通しについては、23年に0.5%増(前回予測は0.75%増)、24年と25年に0.75%増とし、24年は前回予測と変わらないが、25年は1%増から引き下げた。ただ、リセッション(景気低迷)は回避するとみている。
     
     今後の金融政策についても、インフレ圧力が強まるようならさらなる引き締めが必要になるとして、追加利上げに含みを持たせたが、一方で、声明文で前回会合時に使った、「インフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、必要に応じ、政策金利を調整(利上げ)する」との文言を削除した。
     
     ベイリー総裁は会見で、現在の金融政策がインフレを抑制しているとしたうえで、「金利が一定に保たれれば、BOEの最新の8月経済予測ではインフレ率が物価目標に戻ることが示されている」とし、インフレリスクと景気下ブレリスクのバランスを取る必要があると述べた。ただ、利下げに対する考えについては、「時期尚早」と否定的な見方を示した。
     
     次回の会合は9月21日に開かれる予定。
     

  • 2023-06-23 10:00:01

    英中銀、0.5ポイント追加利上げ―2委員が利上げサイクル停止を主張

    <チェック・ポイント>
    ●BOE、「雇用市場の逼迫と需要の回復でインフレがさらに持続する兆候がある」
     
    ●BOE総裁、「インフレは高すぎ、物価目標に戻すため、必要な決定を下す」
     
    ●市場、次回8月会合で追加利上げ―年末までに最終金利6%を予想
     
     
     
     
     BOE(イングランド銀行、英中銀)は22日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を0.5ポイント引き上げ、5.00%とすることを9委員中、7対2の賛成多数で決めたことを明らかにした。市場では0.25ポイントか0.5ポイントの予想でほぼ二分されていた。
     
     利上げは13会合連続。今年2月会合でインフレ率が依然、物価目標を上回り、高い伸びが続いているため、0.5ポイントの引き上げを決めたが、前回3月会合で2月のインフレ率が4カ月ぶりに伸びが加速したものの、一過性と判断、利上げ幅を0.25ポイントに縮小した。0.5ポイントの大幅利上げは2月以来、2回目。5%の金利水準は08年4月(5%)以来約15年ぶりの高水準となる。
     
     今回の追加利上げにより、住宅ローンの借り手に打撃を与える見通しが一段と強まった。エコノミストは住宅ローンの借り手の返済負担増や住宅市場の冷え込みにより、インフレ低下が進むと見ているが、政界ではリセッション(景気失速)のリスクが高まり、生計費危機が深刻化するとして、利上げサイクルの継続に反対する意見が強まっている。
     
     スナク首相は21日の議会答弁で、24年の総選挙に向け、23年末までにインフレ率を半減するとの公約を繰り返したが、クレバリー外相は21日の英スカイニュースのインタビューで、利上げにより国が意識的に経済を縮小すべきだという提案を支持できないとし、リセション引き起こす利上げサイクルの継続に反対を表明するなど、閣内不一致が目立ち始めている。
     
     BOEは声明文で、追加利上げを決めた理由について、「インフレ率は3月の前年比10.1%上昇から4月の同8.7%上昇に低下、5月も同水準にとどまったが、5月経済予測を0.3ポイント上回った。5月のサービス価格も同7.4%上昇と、予想よりも0.5%ポイント高かった。財価格も予想よりもはるかに強かった」とし、その上で、「最近のデータには雇用市場の逼迫と需要の回復力の継続を背景にインフレが一段と持続する兆候があった」とし、インフレ率が想定以上の伸びとなり、依然、大幅に物価目標(2%上昇)も上回る高い伸びにあることを挙げている。
     
     BOEは今後の金融政策について、「雇用市場の逼迫や賃金上昇率やサービス価格の動向など持続的なインフレ圧力の兆候を引き続き注視していく。より持続的なインフレ圧力の証拠があれば、金融政策のさらなる引き締めが必要になる」とし、前回会合時で使った、「インフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、必要に応じ、政策金利を調整(利上げ)する」との文言を残し、追加利上げに含みを持たせた。
     
     市場では今後も利上げサイクルが継続、BOEは次回8月会合で0.25ポイントか0.5ポイントの利上げを予想。最終金利は今年末までに、01年2月以来の高水準となる6%に達し、24年5月まで据え置かれると予想している。
     
     BOEのベイリー総裁は会見で、「インフレは依然として高すぎる。サービスインフレが短期的に高止まりする可能性がある」としたが、「ハント財務相に年末までにインフレ率(全体指数)は主にエネルギー価格の動向を反映し、大幅に低下するとの予想を伝えた」と述べた。しかし、同総裁は「住宅ローンなどローンを抱えている多くの人が心配するのは当然だが、今利上げしなければ、後でさらに悪化する可能性がある」とし、「我々はインフレ率を2%上昇の物価目標に戻すことにコミットしており、それを達成するために必要な決定を下す」と述べている。
     
     次回の会合は8月3日に開かれる予定。 
     

  • 2023-05-12 09:36:01

    英中銀、政策金利を0.25ポイント引き上げ―2委員が据え置きを主張

    <チェック・ポイント>
    ●据え置き主張の2委員は「外部ショック落ち着けばインフレは急激に減速」と主張
     
    ●BOE総裁、「金利水準は一段落すべき時期に近づいている」
     
    ●市場はあと1-2回の小幅利上げを予想
     
     
     
     
     BOE(イングランド銀行、英中銀)は11日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を0.25ポイント引き上げ、4.50%とすると決定した。市場予想通りだった。前回同様、9人の委員のうち7人が支持し、残り2人は据え置きを主張した。
     
     利上げは12会合連続で、このうち0.25ポイントの利上げは2会合連続。それ以前の2会合は利上げ幅が0.5ポイントだった。
     
     追加利上げは食品やアパレル価格を中心にインフレが予想を上回って進んでいるためとしている。一方、据え置きを主張した2委員は、エネルギー価格の高騰などの外部ショックや他のコストプッシュ(インフレ)要因の影響が解消すればインフレの全体指数は急激に減速するとし、利上げの必要性を否定。また、利上げ効果の時間差により、これから過去の累積的な利上げ効果が現れ、その結果、インフレ率が物価目標を大幅に下回る弊害が高まるとも主張した。
     
     BOEは前回会合時で使った「必要に応じ、政策金利を調整する」との文言を残しており、追加利上げの可能性に含みを持たせた。市場では、あと1-2回の小幅利上げを実施すると予想。BOEのベイリー総裁は会見で、「金利水準は一段落すべき時期に近づいている」と述べている。
     
     最近の金融システム不安については、「これらのショックへの調整を続けながら、インフレ率が中期的に2%上昇の物価目標に持続的に戻ることを確実にする」とし、信用不安に配慮し、金利を据え置くよりもインフレ抑制を優先するとしている。
     
     BOEが今回の会合とともに発表した最新の5月経済予測では、政策金利が10-12月期に4.75%でピークに達するとして、前回2月予測時の4.5%から引き上げた。一方、26年には3.50%超と予想しており、その間に利下げが進む見通し。
     
     インフレ率の見通しは、23年で4%上昇から5%上昇に引き上げた。4-6月期は前年比8.2%上昇とみちるが、24年4-6月期は同3.4%上昇、25年4-6月期は同1.1%上昇、26年4-6月期は同1.2%上昇と予想し、25年から物価目標に収束すると見ている。
     
     GDP伸び率の見通しについては、1-3月期と4-6月期をいずれも前期比0.2%増と、前回予想時のマイナス成長から上方修正。23年のGDP伸び率も0.5%減から0.25%増、24年を0.25%減から0.75%増、25年を0.5%増から0.75%増にそれぞれ引き上げた。ベイリー総裁は会見で、「以前は長く浅いリセッション(景気低迷)を予想していたが、エネルギー価格が下落し、経済活動は予想よりも好調だ」とし、リセッションは回避できるとした。最新予測では23年4-6月期を前年比横ばい、24年4-6月期を同0.9%増、25年4-6月期を同0.7%増、26年4-6月期を同1.1%増と予想、24年から景気が回復するとみている。
     
     次回の会合は6月22日に開かれる予定。
     

  • 2023-03-24 10:39:01

    英中銀、政策金利を0.25ポイント引き上げ―2委員が据え置きを主張

    <チェック・ポイント>
    ●金融システム不安に対しては「英銀システムは強い自己資本と流動性を維持」

    ●据え置き主張の2委員、「行き過ぎた利上げは早期利下げを必要とする」と指摘

    ●市場は次回会合での追加利上げで利上げサイクル停止と予想




     BOE(イングランド銀行、英中銀)は23日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を0.25ポイント引き上げ、4.25%とすると決定した。市場予想通りだった。9人の委員のうち、7人が支持し、残りの2人は据え置きを主張した。利上げは11会合連続だが、利上げ幅は前回、前々回の0.5ポイントから縮小した。

     BOEは声明文で、追加利上げを決めた理由について、最近のインフレ率の高さをあげており、もFRB(米連邦準備制度理事会)同様、インフレへの対応を優先した格好。今後についても、「より持続的なインフレ圧力の兆候があれば、金融政策の追加引き締めが必要となる」とし、利上げを継続する可能性を示唆した。

     最近の欧米での金融システム不安については、「英国の銀行システムは強い自己資本と流動性を維持しており、金利上昇期などさまざまな経済シナリオでも経済を支え続けることができると判断している」とし、「英国の銀行システムは依然として回復力がある」と指摘している。

     一方、委員のうち据え置きを主張した2人は、エネルギー価格の高騰などの外部ショックや他のコストプッシュ(インフレ)要因の影響が解消するにつれて、インフレの全体指数は23年にかけて急激に減速するため、価格設定への圧力も低下するとし、利上げの必要性を否定。また、利上げ効果の時間差により、これから過去の累積的な利上げ効果が現れ、その結果、インフレ率が物価目標を大幅に下回る弊害が高まるとも主張。また、行き過ぎた利上げにより、BOEは早期に利下げを開始する状況に陥ると懸念を示した。

     BOEはGDPの見通しについて、23年1-3月期を前期比0.1%減と予想し、2月経済予測の0.3%減から上方修正した。4-6月期も前回予想時の0.4%減からわずかにプラス成長に転じるとの見通しを示している。

     市場では、今回の会合で0.5ポイントの大幅利上げの必要性について議論がなかったことや、ベイリー総裁のインフレがピークに達したとの発言を受け、次回5月11日会合で追加利上げし、利上げサイクルを終了するとみている。

     次回の会合は5月11日に開かれる予定。

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