ECB、中銀預金金利をマイナス0.50%に引き下げ―金融緩和パッケージ導入

経済

2019/9/13 10:20

<チェックポイント>

●「物価目標に収束するまで政策金利は現状かそれ以下」とフォワードガイダンスを明示

●資産買い入れによる量的金融緩和を11月から月額200億ユーロで再開へ

●マイナス金利の適用除外認める2階層方式の新準備預金制度を10月導入へ

 ECB(欧州中央銀行)は12日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に据え置いた上で、下限の中銀預金金利だけを0.10ポイント引き下げマイナス0.50%とした。上限の限界貸出金利は0.25%に据え置いた。

 今回の決定の背景にはユーロ圏のインフレ率が長期にわたって物価目標を下回り続けていることがある。最新の8月ユーロ圏消費者物価指数(HICP、消費者物価指数から医療費や持ち家コストなどを除いたユーロ圏の統一インフレ指標)は前年比1%上昇と、7月の同1.1%上昇や6月の同1.3%上昇、5月の同1.2%上昇から一段と低下し、物価目標を大幅に下回っている。

 理事会後に発表した声明文で、「今後は経済予測の期間中、インフレ見通しが2%をやや下回る水準(物価目標)に収束するまで、政策金利を現状の水準か、それ以下の水準とする」との文言を新たに追加し、前もって将来における金融政策の方針を表明するフォワードガイダンスを示した。

 ECBは18年12月に終了した資産買い入れプログラム(APP)による量的金融緩和(QE)を、11月1日から月額200億ユーロのペースで再開することも明らかにした。また、今回から買い取り対象となる資産を国債だけでなく、カバードボンド(地方自治体向け貸付やモーゲージ貸付を担保として金融機関が発行する債券)やABS(資産担保証券)、企業は発行する投資適格級のユーロ建て社債に拡大する。

 ECBはユーロ加盟各国のECBへの出資比率に応じて国債を買い取る「キャピタル・キー規定」があるため、各国の出資比率を変更しなければドイツなどの適格国債の買い入れが難しい。このため、今回のAPP再開では同規定を変更せずに済む民間セクターの優良資産を買い取り対象に広げている。

 キャピタル・キーについて、ドラギECB総裁は会見で、「変更しない」と述べた。この発言を受け、APP再開の発表直後はドイツ国債や米国債が買われ、米10年国債利回りは一時1.68%まで低下したが、債券買い一巡後は利回りが1.78%まで上昇している。

 今回の中銀預金金利の一段の引き下げは銀行の企業や家計への貸し出しを促進し、景気刺激を狙ったものだが、市場では疲弊し始めている銀行の金利支払い負担が増えることで、さらなる打撃となり、金融市場を不安定にさせるばかりか、その結果、銀行による貸し出し能力を抑制することを懸念している。

 このため、ECBは今回の会合で、マイナス金利の銀行への悪影響を軽減する措置として、すでに日銀やスイス国民銀行(中銀)が採用しているような、マイナス金利の適用を除外し金利を0%とする例外措置を設けることで、銀行の貸し出しを円滑化させるティアード(階層)方式の新準備預金制度を10月30日から始まる準備金積立期間中に導入することを決めた。ECBはこれまでティアード方式の導入などを専門委員会に検討を委託していたが、10月からは2階層の準備預金制度を導入する。

 また、ECBは景気刺激のための措置として、TLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペ)の第3弾(TLTRO3)を維持したが、実施要項の一部を変更。TLTRO3に基づいて、ECBはユーロ圏内の銀行に対し、適格貸出金残高の最大30%まで直接貸し出すが、貸出期間を従来の「2年間」から「3年間」に延長した。貸出金利についても従来のリファイナンス金利の平均より0.10ポイント高い金利ではなく、過去のリファイナンス金利の平均と同じ水準を適用するとした。さらに、貸し付けに積極的な銀行に対しては、貸出金利をリファイナンス金利より低くし、また、中銀預金金利の平均を下回る金利水準を適用する。

 次回の金融政策決定会合は10月24日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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