【株式新聞・総力配信】下期為替レートを総点検(1)―増額期待株を探れ!

株式

2019/11/18 14:06

 決算発表ラッシュを通過し、各社の今年度の下期の為替前提が出そろった。ドルレートについては時価を下回る1ドル=105円に設定している企業が多く、計画比での利益拡大余地が生まれている。それぞれの動向をチェックすることで、増額修正期待銘柄が浮かび上がる。

<1ドル=105円最多、100円は6社>

 主な2、3月決算企業の為替前提を調べた。下期分を開示しているか、推測が可能なおよそ180社の平均は、上期実績より2円超円高の1ドル=106.5円となった。通期ベース(314社平均)では同108.5円だ。

 気になる個別企業の状況を見ると、下期に1ドル=105円としているケースが最も多く全体の4割強の約80社が集中した。同100円の保守的な水準をもとに収益予想を設計している企業も日立建機<6305.T>やファナック<6954.T>、三ツ星ベルト<5192.T>など6社(うち1社は10-12月計画)ある。

 次いで多いのは1ドル=108円で全体のほぼ4分の1。同110円は1割強で、通期では約34%を占めた。対ユーロの平均は1ユーロ=119円と時価並みだ。なお、9月調査日銀短観の事業計画の前提レートは1ドル=108.7円だった。

 下期に1ドル=105円を想定する場合、一定以上の感応度(1円円安ごとの年間利益の増減額の試算)があれば交易や換算差による業績予想の増額が視野に入る。仮に1ドル=110円で推移した場合、感応度の大きいトヨタ自動車<7203.T>の連結営業利益は下期の計画(9957億円)に1000億円超が上積みされ、通期では2兆5000億円台(計画は2兆4000億円)に乗る計算だ。

 もちろん、他の通貨の変動や数量面の好不調にも業績は左右されるため円安=上方修正と決めつけるわけにはいかない。ただ、株価にとって強力な期待要素であることは間違いない。

<新光電工やササクラ注目>

 1ドル=110円での利益計画の想定増額率が大きいのは新光電気工業<6967.T>や小森コーポレーション<6349.T>、ジャムコ<7408.T>など。新光電工は感応度が10億円を超えるとみられ、今3月期の利益水準の見込み(連結営業利益予想は通期12億円、下期22億円)を踏まえると影響は絶大。主力の半導体パッケージも次世代品の貢献が本格化する。

 海水淡水化装置のササクラ<6303.T>は、やや確度が落ちるものの円安が連結経常利益段階での強い追い風になる。海外のプラント顧客への外貨建て売掛金の換算に作用するため、期末レートが円安であれば為替差益が発生する。同社によればその額は1円あたり7000万―8000万円と試算されるため、1ドル=110円で着地すれば、理論上は今3月期の経常利益の計画(1億円)が5億円前後まで跳ね上がることになる。

<下期平均1ドル=110円での利益上積み率が大きい主な企業>

銘柄(コード)  下期ドル前提 対計画増益率

ササクラ<6303.T>   105円 375.0%

新光電工<6967.T>   105円 218.8%

小森<6349.T>     105円  22.5%

ジャムコ<7408.T>   105円  21.6%

FDK<6955.T>    105円  21.4%

日産自<7201.T>    105円  18.8%

SUBARU<7270.T> 105円  12.8%

三菱自<7211.T>    107円  12.5%

日東電<6988.T>    105円  10.6%

日立建機<6305.T>   100円  10.5%

日精樹脂<6293.T>   100円   9.4%

川崎汽<9107.T>    108円   9.2%

コマツ<6301.T>    100円   7.9%

住精密<6355.T>    105円   7.8%

デクセリアル<4980.T> 108円   7.6%

NTN<6472.T>    107円   7.5%

ローム<6963.T>    105円   7.4%

*下期の為替が平均で1ドル=110円となった場合に想定される各社の利益計画の上積み率を、下期の為替感応度(推定含む)を基に株式新聞が試算。利益は営業利益(ただしササクラと川崎汽は経常利益)。

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ