<年末年始特集>米投信「リタイアメント・インカム」巡り試行錯誤、定率取り崩しも(2)
2019/12/30 18:09
(1)からつづく
<米国でも定率取り崩し商品>
退職後の運用先として、リタイアメントファンド以外で候補となるのが「マネージドペイアウト」と呼ばれるタイプのファンドとなり、バンガードが運用する「Vanguard Managed Payout Investor」が代表的なファンドとなる。目標分配率を年率4%として分配金は毎月支払われ、目標分配比率を達成するため分配金の一部は元本を取り崩して支払われる。いわゆる定率取り崩しの商品だ。
同ファンドは株式が52.76%と約半分を占めるが、オルタナティブの比率が24.63%と高い点が特徴で、コモディティやマーケットニュートラルといったヘッジファンド戦略への分散も行う。もっとも、同タイプのファンドの中では最大規模となる当ファンドでも2019年11月末時点の純資産残高は18億ドルで、同社のファンドとしては、運用規模は小さい。
また、その他では、フィデリティが提供するSimplicity RMDシリーズと呼ばれるファンドがある。米国では、確定拠出年金で積み上げた資金について、70.5歳に達した後に最低引き出し額以上を毎年引き出さなければならないRMD(Required minimum distributions:最低引き出し義務)と呼ばれるルールがある。引き出し率は、IRS(内国歳入庁)が公表する平均余命に基づく計算式によって決定され、例えば70歳であれば余命27.4年で、引き出し率は3.65%となる。最低引き出し額に達しなかった場合には不足額に対してペナルティとして課税が行われる。こうした中で、Simplicity RMDでは、RMDで適切な引き出しが行われるよう自動的に計算が行われ、年齢に応じた資産配分で運用を行う点がメリットとなっている。
上記のようにリタイアメントファンドを中心に退職後のインカムニーズに対応するための商品開発が行われているものの、支出の傾向や寿命、リスク許容度など個人差が大きいことなどが課題となっており、模索が続いている状況だ。老後の資金問題が日米で関心を集める中、今後の展開に引き続き注目したい。
提供:モーニングスター社
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