<新興国eye>19年のカンボジア電力事情―需要が急増
2020/2/28 10:52
カンボジア電力庁(EAC)は、19年年次報告書「カンボジア電力開発の概要」を発表しています。
19年末の設備容量は、前年末の2635メガワットから28.3%増の3382メガワットに増加しました。なお、この数字は、周辺諸国からの輸入枠(627メガワット)と工場等の自家発電設備(400メガワット)を含んだものです。年間発電量は、前年の9739ギガワット時から23.4%増加して1万2015ギガワット時に達しました。過去15年間で、設備容量は14.5倍に、発電量は12倍に急増しています。2020年の発電量の予測は、前年比16.4%増の1万3981ギガワット時に達する見込みです。
19年は、国内での発電量が74.8%、ベトナム、タイ、ラオスからの輸入電力が25.2%となっています。国内の内訳は、水力33.5%、石炭火力32.6%、石油火力5.8%、再生可能エネルギー1.3%、自家発電1.5%などとなっています。輸入電力の比率が一時は60%にも達していましたが、国内での発電所整備が進み、輸入電力の比率は18年には16.1%まで大幅に低下しました。しかし、前年の乾季に電力需給がひっ迫し計画停電に追い込まれたこともあり、19年の輸入電力量はほぼ倍増しました。
送電線も整備が進み、115キロボルトと230キロボルトの基幹送電線は総延長2267kmに達しています。建設中・計画中の送電線は、1750キロメートルとなっており、一部は超高圧の500キロボルトとなる予定です。
全国送電網と接続している村落数は、1万3131村で、全体の92.7%となっています。世帯ベースでは、357万世帯中268万世帯が電化されており、電化率は74.7%となっています。
19年の計画停電に懲りて、カンボジアではいくつもの発電所建設が進められ、送電網の整備も進められています。しかし、発電所の完成までにはまだ数年を要することもあり、当分の間は、電力需給は引き続きギリギリのラインが続くものと見られます。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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提供:モーニングスター社
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