米3月中古住宅販売件数、前月比8.5%減の年率527万戸―市場予想下回る

経済

2020/4/22 10:06

<チェックポイント>

●新型コロナウイルスの悪影響で急減―11カ月ぶり低水準に

●販売価格(中央値)は28万600ドル―前年比8%上昇と高水準続く

●未販売住宅(在庫)は3.4カ月分―供給不足続く

 NAR(全米不動産業協会)が21日発表した3月中古住宅販売件数(季節調整済み)は、前月比8.5%減の年率換算527万戸と、2月の同6.3%増の576万戸から大幅減少に転じ、19年4月(523万戸)以来11カ月ぶりの低水準となった。また、市場予想の535万戸に対しても下回った。中国で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)による需要減少や感染拡大防止のための経済抑制の影響を受ける格好となった。季節要因を無視できる前年比は0.8%増と、9カ月連続で前年水準を上回ったが、2月に比べ伸びは縮小した。

 今回の結果について、NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、「3月統計はコロナウイルスの悪影響を受けると予想していたが、その通りとなった」としたが、「一時的とはいえ、今後2カ月(4-5月)の数字は一段と厳しいものになる」と警戒している。住宅価格の見通しについては、「価格は下がらず、上昇が続く可能性が高い」との見方を示す。

 市場では、3月の中古住宅販売統計はウイルス感染が比較的穏やかな1-2月に契約書に捺印し、その後、契約完了の時点で販売件数をカウントしているため、それほど大きな減少とはならなかったと見ている。一方、ヤン氏もパンデミックとなった3月以降の契約完了件数を示す4月と5月は前月比30-40%減と大幅に悪化する可能性が高いとみている。

 住宅供給の過不足感を示す3月時点の未販売住宅(在庫)は前月比2.7%増の150万戸と、3カ月連続で増加した。また、同月の販売ペースに換算した在庫水準も3.4カ月分と、前月の3カ月を上回った。ただ、1年前の3.8カ月分や、適正水準とされる5-6カ月分を大きく下回っており、住宅供給不足の状況が住宅販売の足かせとなっている。ヤン氏は、「コロナ感染拡大防止の自主検疫により、中古住宅市場に物件を売り出す機会が少なくなっており、住宅購入者の選択の余地を狭めている。今後、経済活動が再開された場合、より多くの住宅在庫が必要になる」と懸念を示している。

 中古住宅の販売ペースをみると、販売物件が3月中に市場に残っていた期間は29日間と、2月の36日間から短期化した。3月中に販売された物件のうち、全体の52%(2月は47%)が市場に出てから1カ月弱で販売され、2月と比べ販売ペースが加速した。

 地域別の販売件数を見ると、全米4地区のすべてで減少した。北東部は前月比7.1%減(前年比3%減)の65万戸となった一方で、西部は同13.6%減(同0.9%減)の108万戸と急減した。全体の4割以上を占め最もウエートが大きい南部も同9.1%減(同0.9%増)の229万戸、中西部も同3.1%減(同4.2%増)の125万戸となった。

 中古住宅価格は中央値で前月比3.8%上昇の28万600ドルと、2カ月連続の大幅上昇。前年比も8%上昇と高い伸びが続いており、実質賃金上昇率(0.7%)や名目賃金上昇率(3.1%)を大幅に上回り、97カ月連続で前年水準を上回った。

 一方、住宅供給不足と高水準の住宅価格が続く中、3月の新規住宅取得者の比率は34%と、1年前の33%や前月の32%を上回った。19年と18年の各33%を超え、17年の34%と一致した。コロナ危機の中で新規住宅取得者の比率が高かったことについて、ヤン氏は、「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)にもかかわらず、不動産会社は顧客にバーチャルツアーで住宅を紹介したことや、住宅ローン金利が低水準にあるため、多くの新規住宅取得者にとって住宅購入が可能な状態が続いている」と指摘している。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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