<中原圭介の相場観>歴史的な見地から今の米国は危うい

株式

2020/5/18 16:45

 日経平均株価の値動きは3月以降、NYダウ先物と90%超の連動をしている。ゆえに、今後の日本株は米国株の動向に左右されているといっても過言ではない。

<好材料と悪材料>

 そこで米国株にとって、今後予想される好材料と悪材料を整理してみたい。

 好材料は主に2つある。その1つは、米国が最低でも1兆ドル規模の追加の経済対策を決定するということだ。与野党の意見に大きな隔たりがあるので即座には決まらないものの、失業者のいっそうの増加を考えれば、タイムリミットとして1-2カ月以内に決めざるを得ないだろう。

 もう1つは、FRB(米連邦準備制度理事会)が追加の金融緩和策を検討しているということ。これは、パウエル議長が公言しているので、何らかの追加策が確実に行われることになるだろう。具体的にどのような緩和策を行うかは定かではないが、それなりにインパクトがある内容を議論しているに違いない。

 その1方で、悪材料は主に3つある。1つ目は、米国の雇用がますます悪化していくということだ。米国の4月の失業率は14.7%と既に戦後最悪だが、5月は20%程度に上昇するといわれている。失業保険の新規申請件数(5月9日までの集計)は過去8週間で3600万人を突破し、5人に1人が職を失っている計算になる。

 2つ目は、米国の対中国政策が再び激しさを増すという懸念だ。その手始めとしてトランプ政権は15日、ファーウェイへの禁輸措置を強化すると発表している。これに対して、中国も既に米国のIT企業への報復を検討しているという。トランプ大統領は11月の大統領選挙をにらみ、中国への厳しい対応を継続せざるを得ないだろう。

<科学と歴史を無視>

 そして何よりも懸念しているのは、米国内で感染者数が再拡大する兆しを見せ始めていることだ。連邦政府は経済再開の指針として「新規の感染者数が過去14日間で減少傾向にある」という判断基準を設けているが、大半の州が基準を満たさないまま経済活動の再開を始めている。その結果として、規制が緩和された州ほど、新規感染者数が再び増加している。例えば、テキサス州やミシシッピ州などでは新規感染者数が過去最高を更新している。

 私は大学で歴史学を専攻したが、感染症の専門家と歴史の研究者の回答は同じだ。それは、感染症には複数の波があるということ、感染を抑えるためには安易に規制を緩めてはならないことだ。

 そういった意味では、米国はいま、科学と歴史を無視した危険な賭けに出ているように思う。第1波の再拡大によって経済活動が再び制限されることになれば、経済やマーケットへの影響はいっそう深刻になるだろう。

 パウエル議長は先日、「ワクチンなくして経済回復はない」と述べたが、まさにその通りだ。しかし、多くの専門家が「ワクチンの開発には最低でも1年程度かかる」といっているのをみると、日経平均が2万円を超えている水準では、できるだけポジションを落として次の展開に備えた方がよさそうだ。

(アセットベストパートナーズ 中原圭介)

提供:モーニングスター社

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