NYダウ1861ドル安、楽観ムードに調整―パウエル発言、新型コロナ第2波懸念きっかけに
2020/6/12 8:48
過熱感の強かった株式市場が久々に冷や水を浴びせられた。11日のNYダウは前日比1861ドル安の2万5128ドルに急落した。再び勢力を強めている新型コロナウイルスや、支持率低迷が続くトランプ大統領の11月の大統領選における落選リスクの高まりを背景に、実力以上に買われてきた株価ににわかに調整が入った格好だ。
<3月中旬以来の下げ幅>
NYダウの下げは幅、率(6.9%)ともに約3000ドル安となった3月16日以来の大きさ。11日までの3日続落の間に計2437ドル値下がりし、終値ベースで2万5000ドル台を回復した5月26日以来の水準に後退した。
前週には市場予想に反して改善した5月雇用統計を受け急騰するなど、米株市場は熱気に沸いていた。ハイテク株で構成するナスダック総合指数(11日は527ポイント安の9492ポイント)は連日で最高値を更新して1万ポイントを突破、コロナ・ショックを完全に乗り越えたようにも見えた。
しかし、経済に比して株価が先走っていた感は否めない。失業率には新型コロナで職を失った人が多く含まれるとみられる「理由不明の休職者」がカウントされておらず、5月の労働参加率は60.8%(前月は60.2%)と低いままだ。V字回復の見込みが薄いことは認識されていたものの、ショートカバーも相まって好調な地合いを維持してきた。
10日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は米景気の先行きについて慎重な見方を示した。一方、米国では新型コロナの感染者数が再び拡大傾向を強める。人種差別への抗議デモも沈静化しておらず、トランプ大統領の支持率は一部の調査で危険水域の38%まで下がった。見切り発車の経済再開が感染拡大の第2波を招くような事態になれば、「失策」の印象は一段と強くなる。
<日経平均は2万2000円割れへ>
こうした中、きょう12日の東京市場にも売り圧力が引き継がれそうだ。米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の日経平均株価先物の清算値は2万1640円(11日の日経平均終値は2万2472円)まで下げ、午前8時12分現在は2万1800円を付けている。これまで先物の売りポジションを上値で解消する「踏み上げ」の動きが相場の上げをけん引してきたが、メジャーSQ(特別清算指数)算出を控えて相場が荒れ模様となっている。
みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは「行き過ぎた楽観の反動が、パウエル議長の発言と米国内での新型コロナの状況をきっかけに噴出した」と指摘。「日本株についても、買い戻し中心だった上げ相場がSQ通過に伴い調整含みの動きに転じる可能性がある」としている。
提供:モーニングスター社
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