FOMC、政策金利と量的金融緩和を据え置き―新型コロナ感染再拡大に強い懸念

経済

2020/7/30 10:33

●パウエル議長、「経済活動が広範にわたり安全となるまで経済の完全回復はない」と指摘

●雇用・物価目標達成までゼロ金利政策を継続

●市場、FRBの次の一手を「イールドカーブ・コントロール」の導入と予想

 FRB(米連邦準備制度理事会)は29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を現状のゼロ金利(0.00-0.25%)に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 新型コロナウイルス感染拡大を受けた金融危機に対する措置である量的金融緩和(QE)も据え置いた。FRBは3月から資産買い取りに踏み切り、前回6月会合で国債買い入れ額を月800億ドル、MBS(不動産担保証券)を月400億ドルの計1200億ドルとすることを決めている。

 FRBは今回の会合でも、新型コロナの感染拡大に対して強い懸念を示し、声明文では「米経済の道筋は新型コロナの行方にかなり大きく左右される」という文言を使った。これは新型コロナ危機がいつまで続くか不透明なため、FRBの金融政策の舵取りの難しさを露呈したものだ。感染が拡大する中では市場の規律が働かない恐れがあり、FRBによる金融緩和よりも政府の財政政策が重要で、こうした状況下では、FRBができることには限界がある。

 パウエルFRB議長は会見で、「経済活動が広範にわたり安全と確信されるまで経済の完全回復はない」と述べた。現状を打破するために金融政策だけの力では困難で、新型コロナ危機に左右され、経済の完全回復までに時間がかかる見通しを改めて強調している。

 一方、長短金利が歴史的な低水準で落ち着いた動きとなっており、経済成長を支えていることから、市場ではFRBが次の一手を示すには時間的な余裕があるとみている。実際、18兆ドル規模の米国債券市場ではFRBは景気が完全回復するまでゼロ金利政策を数年間続けると見ているため、当面、金利が動くことは望めず、開店休業状態が続くとみている。

  市場がFRBの次の一手として注目しているのは、ゼロ金利を長期にわたって維持するため、量的金融緩和による資産買い入れの目標として、10年国債の利回り目標を設定するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の導入だ。FRBのメンバーもイールドカーブ・コントロールの議論を始めているが、これは主に短期国債の利回りを目標としている。市場ではより長期のイールドカーブ・コントロールの方が大きな効果があると見ている。

 FRBは新型コロナ危機が収束しても物価目標の達成に向かった道筋が見えるまでゼロ金利を継続する考えを改めて強調したが、市場では次回9月15-16日会合でゼロ金利政策を継続する目標や期限を明示すると予想している。FRBは声明文で、「金融政策スタンスの規模やタイミングンに関する将来の調整を決めるにあたり、雇用最大化と物価目標の達成との関連で経済状況の予測値や実績値を検討する」としている。

提供:モーニングスター社

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