米大統領選・トランプ相場の分水嶺―議会選結果がより重要?

株式

2020/9/11 15:55

 投票日まで2カ月を切った米国の大統領選挙は混戦模様を呈している。世論調査では民主党のバイデン前副大統領が現職の共和党トランプ大統領に対するリードを保っているものの、その差は一時期より縮小した。同時に行われる連邦議会選挙も、来年以降の株式市場の方向を決める重要な材料となる。

<混戦の様相>

 政治系サイトのリアル・クリア・ポリティクスによれば、11月3日の米大統領選へ向けたトランプ氏の支持率(9月10日時点)は全米平均で43.0%とバイデン氏の50.5%に引けを取る。新型コロナウイルスの感染拡大や黒人差別反対運動への対応をめぐる不備が響き、劣勢が続いている状況だ。

 ただ、両候補の差は6月下旬の約10ポイントをピークに、直近では7.5ポイント程度まで詰まってきた。トランプ氏が株式市場の復調や中国への強硬姿勢を支持回復につなげた一方で、バイデン氏の支持率は50%前後で伸び悩んでいる。切り札のハリス上院議員を副大統領候補に指名したものの、目立った変化はない。

 トランプ氏をめぐっては、コロナ・ショック前までの米景気の拡大を評価する声が根強い。より高齢な上、経済政策の手腕が未知数のバイデン氏は求心力に欠ける部分もある。バイデン氏の「中国寄り」を印象付けるトランプ陣営のネガティブキャンペーンも、一定の効果を上げているとみられる。

 いわゆる「隠れトランプ支持者」の存在も踏まえると、世論調査だけではバイデン氏の勝利を確信することはできない。このため株式市場も、今回の大統領選を事前に織り込めずにいる。

 大統領選の結果がもたらす影響については、トランプ氏の勝利が株式市場にとってポジティブだとする見方が一応は優勢だ。バイデン氏はトランプ氏が引き下げた法人減税の再引き上げを主張している。また、キャピタルゲインや配当への課税増額も想定される。

 もっとも、バイデン氏が下馬評通りに制した場合も、コロナ禍で経済環境に不透明感が強い中であえて反マーケット色の強い政策を押し通さない可能性もある。また、環境分野のイノベーションが期待されるほか、トランプ氏が繰り返してきた気まぐれにも思える言動に投資家が振り回されるリスクが減る点で、再選阻止はむしろ好材料だとみる向きもある。

<最良パターンは「上下院とも共和党」>

 一方、過去のデータを参考にすると、同時に実施される議会選が株価に与える影響が大きいようだ。

 1992年以降の大統領選と同時実施の議会選の結果とNYダウの関係をみると、共和党、民主党いずれの大統領候補が勝利したケースもその後の相場の動きに大きな差はない。2008年のオバマ大統領の1期目はNYダウの軟調が目立ったものの、同年はリーマン・ショックの起きた特別な年だった。半年後までに2ケタ上昇を達成した16年のトランプ氏は共和党だが、12年のオバマ氏、96年のクリントン大統領は民主党だ。

 こうした半面、議会選ははっきりとした傾向が表れている。上院、下院とも共和党が過半数の議席を獲得した3回の機会は、いずれも半年後までNYダウが上昇した。しかし、上下院とも民主党の勝利、あるいはそれ以外のケースの勝率はまちまちとなっている。

 経験則に照らせば今回はトランプ氏が再選し、なおかつ共和党が上院の過半を守り、下院の多数派も奪回する結果が最良パターンと言える。ただこのシナリオは実現性が低い。しかし、仮にバイデン氏が大統領になったとしても、議会を共和党が制するケースでは株価は堅調さをキープするかもしれないことを示唆している。

提供:モーニングスター社

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