米8月小売売上高、前月比0.6%増―4カ月連続増加も伸び鈍化、市場予想下回る

経済

2020/9/17 10:47

<チェックポイント>

●伸び率鈍化の主因は、失業給付の割り増し終了

●アパレルやレストラン、家具、建築資材・園芸、家電が急増

●コア小売売上高、前月比0.1%減―四半期GDP押し下げへ

 米商務省が16日発表した8月小売売上高(季節・営業日調整後)は速報値ベースで前月比0.6%増の5375億ドルと、7月の同0.9%増(改定前は1.2%増)からさらに増加し、4カ月連続の増加となった。ただ、新型コロナの感染再拡大の悪影響を受けて伸びは鈍化し、市場予想の同1.0%増を下回った。一方、季節要因を無視できる前年比は2.6%増と、7月の2.4%増(改定前は2.7%増)を上回った。

 前月比で伸び率が大幅に鈍化した原因は、コロナ禍で新学期需要が低迷したこと、政府の失業保険給付の週600ドルの割り増し給付制度(LWA)が7月31日に、中小企業支援策「給与保護プログラム(PPP)」が8月8日に、いずれも終了したことから、消費回復のペースが鈍化したことなどが挙げられる。

 トランプ米大統領は8月8日、失業保険給付の割り増し給付について、新たに週400ドルの割り増し給付を実施する大統領令に署名したが、これは各州政府が全体の25%に当たる100ドルを拠出する必要があり、州政府が拠出できない場合の割り増し額は300ドルと、従来の半分になるなど、その効果は州によってばらつきがある。さらに、PPPなどの政府の追加経済支援策については、議会が11月の大統領選挙が終わるまで承認しない可能性が高く、9月以降も消費回復ペースが鈍化する懸念が強まっている。

 前月比の内訳は、全13業種のうち、9業種で増加し、4業種で減少した。増加幅が最も大きかったのは、月ごとに変動が激しいガソリンスタンドを除くと、レストラン・バーの前月比4.7%増(7月は4.1%増)。次いでアパレルの同2.9%増(同2.2%増)、家具の同2.1%増(同0.9%増)など。家具はオンラインで日常業務のコミュニケーションを行うテレワークの高まりを受け、パソコンや冷蔵庫などが売れ、4カ月連続の増加となった。このほか、ホームセンターなどの建築資材・園芸も同2.0%増(同2.4%減)、電子機器・家電も同0.8%増(20.7%増)、ヘルス(薬局・美容)も同0.8%増(同4.5%増)と堅調。自動車・同部品は同0.2%増(同1.0%減)だった。

 減少幅が最も大きかったのは、スポーツ用品・趣味・楽曲・書籍の前月比5.7%減(7月は5.3%減)。次いでグローサリーストアを含む食品・飲料水販売は同1.2%減(同0.6%増)で、グローサリーストアは同1.6%減(同0.7%増)、百貨店やスーパーなどの量販店を含む一般小売販売は同0.4%減(同1.1%減)、このうち、百貨店は同2.3%減(同2.0%増)だった。どのカテゴリーにも入らない「その他小売」も同0.2%減(同3.0%増)となった。

 また、これまで外出制限下でも販売が好調だった、米オンライン小売大手アマゾン・ドットコム<AMZN>や米小売最大手ウォルマート・ストアーズ<WMT>などのオンライン小売は前月比横ばい(同0.3%増)と鈍化した。

 ガソリンスタンドは、新型コロナの感染再拡大で夏のドライブ需要がさえず、前月比0.4%増と、前月の同4.4%増から伸びが鈍化した。この結果、全体の小売売上高から月ごとに変動が激しいガソリンスタンドと自動車・同部品を除いた実質の小売売上高は同0.7%増、ガソリンスタンドだけを除いた小売売上高は同0.6%増(同0.6%増)、自動車・同部品だけを除いた小売売上高は同0.7%増(同1.3%増)となった。いずれもガソリンスタンドや全体の約20%を占める自動車・同部品の弱い伸びが足を引っ張った格好。

 一方、ガソリンスタンドと自動車・同部品に加え、建築資材や飲食レストランを除いた、いわゆる“コア小売売上高”(コントロール・グループ)は前月比0.1%減となり、4カ月ぶりに減少。これは7-9月期GDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費を押し下げることを意味する。コア小売売上高はGDPを構成する個人消費支出の財支出に組み込まれる重要な指標となっている。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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