<新興国eye>カンボジア中銀デジタル通貨「バコン」が正式スタート

新興国

2020/11/13 13:52

 10月28日、カンボジアの中央銀行(中銀)であるカンボジア国立銀行(NBC)は、CBDC(中銀発行のデジタル通貨)「バコン」の正式スタートを記念する式典を開催しました。バコンは、日系企業のソラミツ社とNBCが協力して開発した安全・簡単・迅速かつ無料の決済・送金を実現するトークン型の中央銀行デジタル決済システムです。バコンについては、19年7月からカンボジア全土でパイロット運用が開始されており、今般正式スタートに至ったものです。

 バコンは、デジタル化されたカンボジアリエルまたはドルを使用し、即時取引を可能にするCBDCシステムです。送金手数料が不要で安全に支払うことができるデジタル通貨であり、18金融機関がすでに参加しています。個人でもスマートフォン(スマホ)に簡単にダウンロード可能で、電話番号やQRコードを使って、個人間や銀行口座間での送金、店頭での支払いなどができるとしています。ただ、現状では、支払い可能な店舗は、あまり見かけられません。

 バコンの導入により、金融包摂の促進、リエルの使用促進、NBCによる金融政策の効果増大などが期待されます。カンボジアの農村部では、銀行などの支店も少なく、金融へのアクセスが課題となっていますが、スマホによって利用できるバコンは、農村部に取り残された人々の金融アクセスに大きな効果があると見られます。

 カンボジアは高度にドル化(自国通貨とドルの並行利用)した経済であり、多くの支払がドル現金で実施されていますが、バコンにより現地通貨リエルの使用促進にも効果があるものと期待されます。また、ドル化されているために、NBCは通常の金融政策(金利誘導、通貨量操作など)が十分に行えませんが、バコンを通じて、こうした金融政策を行う自由度やその効果も増大すると見られます。

 日本では、旧態依然の全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)などのしがらみで、国内送金、キャッシュレスの手数料が高いなどの問題を抱えています。日銀は、CBDCの研究を進めるとしていますが、大きく出遅れているのが実態です。カンボジアは、しがらみの少ない状況を活用して、一気に本格的CBDCの世界に移行しようとしており、今後の大きな発展が期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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