英中銀、政策金利据え置き―量的緩和規模も8950億ポンドに維持
2020/12/18 9:44
<チェックポイント>
●1000億ポンドのコロナ関連融資制度「TFSME」を6カ月間延長
●BOE、「10-12月期GDPを前期比マイナス1%超」と予想
●英EU貿易協議失敗なら21年GDPは1.5-2.0ポイント低下―市場予想
BOE(イングランド銀行)は17日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を過去最低水準の0.10%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。
また、総額8950億ポンド(8750億ポンドの国債買い取り枠と200億ポンドの投資適格級の社債買い取り枠)とする量的金融緩和(QE)の規模も据え置いた。これも市場予想通りだった。BOEは前回11月会合で、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的大流行)で疲弊した景気を回復させるため、QEの規模を1500憶ポンド増額している。
このほか、BOEが3月の緊急会合で創設した、中小企業や家計の資金繰りの悪化を防ぐための1000億ポンドのコロナウイルス関連特別融資制度「ターム・ファンディング・スキーム(TFSME)」の運用期限については、21年4月末から同10月末まで6カ月間延長することも決めた。これは、BOEが銀行に直接、政策金利と同じ低金利で資金を供給することにより、これらの資金が企業や家計に融資される仕組み。融資期間4年のタームローン(証書貸付)となっている。
BOEはMPC議事抄録で、前回会合時と同様、今後の金融政策について、「英国経済の見通しは新型コロナの感染拡大や感染拡大を阻止するための規制措置、EU(欧州連合)との自由貿易協議の見通し、さらには金融市場や家計、企業がこれらにどう対応するかによって左右され、依然、先行きは極めて不透明となっている」とした上で、「われわれは引き続き経済状況を注視し、インフレ見通しが一段と弱くなれば、金融政策の使命(2%上昇の物価目標の達成)を果たすために必要なあらゆる対策を講じる用意がある」と一段の緩和に含みを持たせた。
また、10-12月期GDP(国内総生産)見通しを前期比マイナス1%超になるとした。議事抄録では、「新型コロナの感染再拡大で政府が経済活動を規制したため、12月の個人消費が落ち込む可能性が高い」としている。
今後の金融政策の見通しについて、BOEは議事抄録で前回会合時と同様、「2%上昇の物価目標が持続的に達成されるか、または、経済全体の余剰生産能力(spare capacity)が著しく失われない限り、金融引き締めは行わない」と当面は低金利政策を据え置く考えを示している。
市場では、新型コロナ感染再拡大による景気後退やノーディール・ブレグジット(合意なきEU離脱)になった場合、BOEはサプライサイドからの景気支援で打つ手はほとんどなく、現状維持を続けるしかないと見ている。資産買い取り規模は8950億ポンドと、20年の年間で2倍に拡大しているだけにQE規模のさらなる増額は難しいからだ。ただ、BOEができるのは金融市場の混乱を回避する措置に限られると見ている。
一方、ノーディール・ブレグジットの場合、BOEは国債買い取りペースを速めるとの見方もあり、BOEもその可能性を否定していない。議事抄録では、「景気支援のためのQE規模は前回会合で1500億ドル拡大し、8950億ポンド(国債買い入れは8750億ポンド)となったが、資産買い取り枠は21年末で使い切る見通しのため、現在の資産買い取りペース(週44億ポンド)を今後は引き下げるなど柔軟対応が必要になる。ただ、金融市場が悪化する場合には、反対に資産買い取りペースを引き上げる」と判断している。
政府はEU離脱の移行期間が終了する12月末までにEUとの自由貿易協定(FTA)交渉をまとめなければならないが、ノーディール・ブレグジットに終わった場合、市場では英国の21年GDP(国内総生産)は1.5-2.0ポイント低下するとの見方が出ている。
BOEが前回会合時に発表した最新の経済予測では、20年が2度のロックダウン(5月と11月)が響いてマイナス11.00%に落ち込むと予想。21年はFTA協議が合意することを前提にして、1-3月期から経済活動の再開によりプラス成長に回復し、21年全体で7.25%増(前回8月予測は9.00%増)に回復。22年は6.25%増(同3.50%増)、23年は1.75%増と予想している。
BOEの次回会合は21年2月4日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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