<新興国eye>カンボジアの電力事情―発電設備の整備進む

新興国

2021/1/22 13:31

 カンボジア電力庁(EAC)は、2020年年次報告書「カンボジア電力開発の概要」を発表しています。

 20年末の設備容量は、19年末の2372メガワットから22.9%増の2916メガワットに増加しました。年間電力供給量(近隣国からの輸入電力含む)は、前年の1万1738ギガワット時から6.5%増加して1万2499ギガワット時に達しました。20年は新型コロナの影響で伸び率が落ち着きましたが、過去15年間で、設備容量は12倍に、発電量は10倍に急増しています。21年の電力供給量の予測は、前年比12.0%増の1万3997ギガワット時に達する見込みです。

 20年の電力供給の内訳は、国内での発電量が68.1%、ベトナム、タイ、ラオスからの輸入電力が31.9%となっています。国内の内訳は、水力41.0%、石炭火力46.8%、石油火力8.0%、太陽光発電3.3%、バイオマス0.9%です。輸入電力の比率が一時は60%にも達していましたが、国内での発電所整備が進み、輸入電力の比率は2018年には14.5%まで大幅に低下しました。

 しかし、19年の乾季に電力需給がひっ迫し計画停電に追い込まれたこともあり、19年、20年の輸入電力比率はほぼ倍増しました。21年は、国内で建設していた火力発電所・太陽光発電所が完成したことから、輸入比率は29.0%に低下すると予測しています。

 送電線も整備が進み、115キロボルト・230キロボルト・500キロボルトの基幹送電線は総延長3130キロメートル(19年末2267キロメートル)に達しています。建設中・計画中の送電線は、2133キロメートルとなっており、地方電化の促進と電力供給の安定化・効率化が期待されます。

 全国送電網と接続している村落数は、1万3798村で、全体の97.4%となっています。世帯ベースでは、359万世帯中291万世帯が電化されており、電化率は81.8%(19年74.8%)となりました。

 2019年の計画停電に懲りて、カンボジアでは発電所建設が進められ、送電網の整備も進められています。20年は新型コロナの影響で、需要の伸びが抑制されて、電力需給は一息つくことができました。しかし、電力需要の高い伸びが続くと予想される中で、発電所の完成までには数年を要することもあり、引き続き発電所・送電線等の拡充努力を地道に続けていくことが必要と見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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