アディッシュの21年12月期は2ケタ増収見通し―「高成長のMaaS市場に注力」

株式

2021/3/8 9:09

 カスタマーリレーションに特化したサービスを展開するアディッシュ<7093.T>は、3月4日にオンラインで決算説明会動画を配信した。2月12日、すでに発表していた20年12月期の売上高は27億2300万円(前期比8.8%増)、営業利益が700万円(同94.3%減)の増収・減益で着地。売上高が過去最高を更新した一方、案件数増に伴う労務費の増加や採用・人材への戦略投資を積極化させたことが大幅営業減益の主因となった。

 このほか、上場関連費用の発生や公募増資に伴う外形標準課税等の増加が重しとなり、経常利益が400万円(同96.3%減)、最終損益は400万円の赤字(前期は9200万円の黒字)となった。財務面をみると、20年3月のマザーズ上場、公募増資により6億4900万円の現預金を確保し、自己資本比率は52.1%(前期末比17.4ポイント増)に改善。江戸浩樹代表取締役は、「コロナ禍で社会情勢が不安定な中、財務基盤の強化を図れたことは大きい」と強調する。

 主力サービスの売上高をみていくと、利用者からのお問い合わせを顧客企業に代わって対応する「ソーシャルAPPサポート」が12億1000万円(同4.5%増)。複数の新規案件がサービス開始となったことで堅調な伸びを示した。一方、ネットサービスで生じるリスクを監視するサービス「インターネットモニタリング」は10億2600万円(同11.3%増)となり、ライブ配信等の巣ごもりサービスの需要拡大により中規模案件が積み上がったことが寄与した。

 主力サービスの堅調を支えに、新たな領域開拓やサービス開発も進んだ。同社が重点市場領域の1つとして捉えるMaaS(すべての交通手段での移動を1つのサービスとして捉え、検索・予約・支払いを一元実行する移動支援サービス)の取り組みでは、世界初のMaaS事業者であるMaaSグローバルが提供するアプリ「Whim」や、ニアミーの提供するオンデマンド型シャトルサービス「スマートシャトル」のカスタマーサポートを担当。加えて、国交省の「令和2年度日本版MaaS推進・支援事業」に選定された沖縄全域における観光型MaaS(沖縄MaaS)実証実験のカスタマーサポートを担うこととなった。

 新規サービスでは、SNSなどで投稿する前に、内容再考の機会を促すアラート機能を装備したAI検知サービス「matte(マッテ)」を開発、提供を開始した。また、SNSにおける誹謗中傷への対策ニーズの高まりを受け、企業向けの誹謗中傷対策サービスを個人向けにも展開した。このほか、Vチューバーの投稿が社会通念上問題となるかを判定する「Vチューバー投稿動画監視サービス」、LINEを通じて児童・中高生の不安や悩みを拾い上げ、学校に連絡する「スクールサインforLINE」などのサービスも開始した。

 21年12月期の連結業績予想は、売上高30億-30億8000万円(前期比10.2-13.1%増)、営業利益1900万-3100万円(同2.7-5.6倍)。新型コロナウイルスの影響で、6月までは外出自粛やリモートワークを要する社会情勢が続くことを想定した計画となっている。

 今期計画を達成し、中長期成長を遂げるため、同社は5つの重点市場領域にフォーカスしたサービス開発を行う構えだ。旧来からサービス提供している「ソーシャルメディア」、「アプリ・ゲーム」では幅広い顧客基盤をベースにさらなるサービス開発を促進。近年の潮流で市場領域が拡大しつつある「シェアリングエコノミー」や「フィンテック」では新たなニーズに即しつつ、誹謗中傷対策、出品に絡む問題などの解決に資するサービス開発を行っていく。

 「MaaS」は国内市場が25年に2.1兆円(20年予想比でおよそ10.8倍)にまで成長するとの予測がある。江戸代表は、「MaaSアプリは、利用者が増加していく中で、問い合わせへの対応が高度化するとみている。利用者、事業者の課題解決に資するカスタマーサポートを提供していく。高成長が見込めるMaaS市場で確固としたポジションを築ければ、当社の大きなビジネスに育つ可能性がある」と期待を寄せる。

提供:モーニングスター社

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