米1-3月期GDP、前期比6.4%増―個人消費が10.7%増と急加速

経済

2021/4/30 10:04

<チェックポイント>

●パンデミック前の19年10-12月期GDPの99%まで回復

●民間設備投資は前期比9.9%増、住宅投資は同10.8%増

●コアPCE物価指数は同2.3%上昇し、FRB物価目標の2%上昇を上回る

 米商務省が29日発表した1-3月期の実質GDP(国内総生産)・速報値は、季節調整済みで前期比年率換算6.4%増となり、前期(20年10-12月期)の同4.3%増に続き、3四半期連続で回復した。ただ、市場予想の6.5-6.7%増をやや下回った。新型コロナの新規感染者数の減少やワクチン接種の拡大で多くの州が経済・社会活動への規制を緩和したこと、政府の1兆9000億ドルの追加景気支援策(1400ドルの個人向け現金給付など)の実施、雇用回復を受け、個人消費が急加速したことが大きい。

 1-3月期の実質GDPの実績値(19兆876億ドル)は新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)前の19年10-12月期実績値(19兆2540億ドル)に比べ、99%まで回復したことになる。

 1-3月期GDPの主な内訳は、全体の約7割を占める個人消費が10.7%増と、前期の2.3%増から急加速した。この背景には1-3月期に計151万7000人の雇用が創出されたことや、3月から生活者一人当たり1400ドルの追加現金給付が実施されたことがある。前期は新型コロナ感染者の急増でロックダウン(都市封鎖)が再開され、政府の給与支援も一時停止されたため、レイオフ(一時解雇)が広がり、消費は抑制されていた。

 一方、投資部門は住宅以外の民間設備投資が9.9%増と、前期の13.1%増から伸びは鈍化したが、堅調を維持した。

 住宅投資は10.8%増と、住宅ローン金利が過去最低水準にあることやリモートワークへのシフトにより、住宅取得需要が依然強く、前期の36.6%増に続いて3期連続で増加した。

 住宅投資を除いた民間設備投資の内訳は、事業所ビルや工場、石油掘削リグなどの建物に対する投資は4.8%減(前期は6.2%減)と、5期連続で減少したが、企業の機械設備投資は16.7%増(同25.4%増)となった。

 ただ、在庫投資が大きく減少したため、民間設備投資全体では5.0%減と、前期の27.8%増から3期ぶりに減少した。

 企業在庫投資には第1四半期中に生産されても同期中に販売されなかった製品も含まれるが、1-3月期は半導体不足や木材・貴金属などの価格高騰などで企業の生産が伸び悩み、その結果、需要に追い付かず、生産された財の大半が国内で消費され、在庫が急減したと見られている。

 外需部門では、GDP押し上げ要因である輸出が1.1%減(前期は22.3%増)と、3期ぶりに減少。一方、GDP押し下げ要因である輸入は5.7%増(前期は29.8%増)と、3期連続で増加したが、伸びが鈍化した。輸入の伸びが輸出の伸びを上回ったため、貿易赤字は1兆1755億ドルと、前期より535億ドル赤字幅が拡大した。

 今後の個人消費の先行きを占う意味で重視される可処分所得の伸びは季節調整前で前期比年率換算67.0%増(季節調整後の実質では61.3%増)と、前期の8.8%減(同10.1%減)から3期ぶりに急拡大した。また、可処分所得に対する貯蓄の割合である貯蓄率も21%と、前期の13%を大幅に上回った。今後、個人消費の伸びが加速する可能性がある。額面の貯蓄額は前期(2兆2473億ドル)比83%増の4兆1162億ドルと、ほぼ倍増した。

 インフレ動向を示し、名目GDP(10.7%増)から実質GDPを算出するときに使われる物価指数であるGDPデフレーターは、前期比年率換算で4.1%上昇と、前期の同2.0%上昇や市場予想の同2.6%上昇を上回った。一方、PCE(個人消費支出)物価指数も前期比年率換算3.5%上昇と、前期の1.5%上昇から伸びが加速。また、FRBが最も重視しているコアPCE物価指数(値動きが激しいエネルギーと食品を除く)も同2.3%上昇(前期は同1.3%上昇)となり、FRBの物価目標の2%上昇をやや上回った。物価上昇の背景には企業在庫の減少の理由となった半導体不足や木材・貴金属などの価格高騰がある。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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