<新興国eye>ブラジル中銀、0.75ポイント利上げを決定―次回会合でも同程度の再利上げ示唆

新興国

2021/5/6 14:39

 ブラジル中央銀行は5日の金融政策決定委員会で、最近の急速なインフレ上昇を受け、期待インフレの上昇ペースを調整(抑制)するため、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を0.75ポイント引き上げ、3.50%にすることを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は19年6月まで10会合連続で現状維持を決めたが、翌7月に景気回復ペースが鈍化する見通しが強まったため、18年3月以来1年4カ月ぶりに利下げに踏み切った。20年は新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)による景気悪化懸念が強まったため、8月まで9会合連続の利下げを決め、利下げ幅は計4.50%に達した。このため、9月会合で現状維持に転換し、前回1月会合まで4会合連続で現状維持を決めていた。しかし、インフレの急加速を受け、前回3月会合で5年8カ月ぶりに利上げに転じた。今回の会合でも同率の大幅利上げを実施。利上げ幅は2会合連続の利上げにより、計1.50ポイントに達した。

 中銀は年初の1月会合で、急速なインフレ加速を受け、(物価目標など)所定の条件が満たされない限り、景気刺激スタンスを緩めないとするフォワードガイダンス(金融政策の指針)を終了することを決め、「今後の金融政策の決定は(従来の)フォワードガイダンスから、もともとのインフレ見通しの上ブレ・下ブレの両リスクを示す標準シナリオを反映する形で行われる」とし、今回の会合でも金融政策を通常に戻すという方針を踏襲している。

 最近のインフレ率は、4月中旬のIPCA(拡大消費者物価指数)が前年比6.17%上昇と、11カ月連続で伸びが加速し、物価目標(中心値3.75%、レンジは2.25-5.25%)のレンジの上限(5.25%)を上回っている。

 こうした最近の急速なインフレ上昇について、中銀は声明文で、「原油を例外としてもそれ以外のコモディティ(国際相場商品)相場も上昇し続け、食品や工業製品の物価見通しに影響を与えている。エネルギー価格の上昇が短期的にはインフレ上昇圧力を強める」としたものの、「現在のインフレの急上昇は一時的」との見方を据え置いた。

 その上で、「今回の追加利上げは経済見通しの標準予測やインフレの上ブレリスクがやや高いことを受けたもので、22年を含む金融政策が波及する一定の期間内に物価目標が達成されるとの見通しと合致するものだ」とした。また、「物価安定を維持しながら、経済の急激な変動を抑え、最大雇用を達成することを意味する」とし、追加利上げは調整的な措置だとしている。

 景気の現状認識と見通しについては、「最近の経済指標をみると、ブラジル経済は新型コロナの第2波感染拡大を受けているにもかかわらず、想定以上の改善を見せている」とした上で、「経済成長の先行きの不確実性は依然大きいものの、徐々に正常に戻っていく」とし、前回会合時に比べ、景気の先行きに対する懸念をやや後退させた。

 今後の金融政策については、「部分的に通常の金融政策に戻ることは景気回復期に、ある程度の景気刺激を残すことが適切だ」とし、これまでの金融政策による大規模な景気刺激の度合いを抑える必要性を改めて強調。その上で、「次回6月会合では部分的に通常の金融政策に戻すプロセスを継続するため、今回の利上げ決定と同規模の調整を継続する」と追加利上げの可能性を示唆した。

 次回の金融政策決定会合は6月15-16日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ボベスパ<1325.T>、iSエマジン<1582.T>、上場MSエマ<1681.T>、

 上場EM債<1566.T>

提供:モーニングスター社

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