RBA、政策金利9会合連続で据え置き

経済

2021/9/7 16:25

<チェックポイント>

●資産買い入れ運用期間をを「11月中旬まで」から「少なくとも11年2月中旬まで」に延長

●9月以降、資産買い入れペースを週40億豪ドルに減速を維持

●「インフレ率が2-3%の物価目標レンジになる24年まで利上げせず」も維持

 豪準備銀行(RBA、中銀)は7日の理事会で、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR、銀行間取引で使われる翌日物貸出金利)の誘導目標を過去最低水準の0.10%に据え置いた。市場予想通りだった。

 RBAは20年11月会合で、新型コロナのパンデミック(世界大流行)の悪影響が現れ始めた3月以来、8カ月ぶりに利下げを決めたが、20年12月会合で据え置きに転換。これで据え置きは9会合連続となる。

 市場が注目していた、債券買い入れ規模の段階的縮小(テーパリング)方針の見直しについては、国債などの資産買い入れペースを9月以降、週50億豪ドル(月額200億豪ドル)から同40億豪ドル(同160億豪ドル)に減速するとした7月会合の決定を据え置いた。ただ、買い入れ期間を従来の11月中旬までとしていた方針を、少なくとも22年2月中旬まで継続すると変更した。

 また、RBAは今回の声明文で、前回8月会合で使われた「資産買い入れペースの弾力的運用を維持する」とした文言を削除した上で、「われわれは引き続き、量的緩和(QE)政策について、経済状況やデルタ株感染状況、完全雇用と物価安定の2つの目標の達成度合に照らし、見直しを行う」とし、今後のデルタ株の感染拡大の状況を見極めたい考えを強調している。

 資産買い入れの弾力運用は現在のインフレに対しハト派(景気後退リスク重視の金融緩和派)スタンスを維持しながらもQEの弾力的な運用により景気刺激一辺倒からテーパリングに踏み出したことを意味する。RBAは雇用の最大化と賃金上昇率の3%上昇という2つの目標の達成により、インフレが物価目標の2-3%上昇になるまで景気を刺激したい考えだ。

 市場ではデルタ株感染が急拡大し、ロックダウン(都市封鎖)による経済への悪影響が懸念されていることを受け、RBAはテーパリング計画を白紙に戻し、QEの運用期間を延長すると予想していた。一部ではFRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)が今年後半から慎重にテーパリングを開始する方針を示したことから、RBAもテーパリングに固執するとの見方に分かれていた。

 景気の見通しについては、「デルタ株感染拡大とそれに伴う(経済などの)活動の制限により、景気回復が妨げられている。GDP(国内総生産)は7-9月期にかなり低下し、失業率は今後数カ月上昇する」、「デルタ株の感染拡大は景気回復を遅らせる」とし、前回会合時の「豪州経済は22年から力強い回復を見せる」との見方から後退した。

 インフレ見通しについては、「デルタ株の感染拡大前の強い経済や雇用市場にもかかわらず、賃金と物価の上昇圧力は抑制されたままだ」とした。

 金融政策の見通しについては、前回会合時と同様に、「インフレが持続的に2-3%の物価目標の範囲内に収まると確信するまで、政策金利を引き上げない」とのフォワードガイダンス(金融政策指針)を維持した。

 ロウ総裁は賃金と失業率を金融政策の前面に出し、失業率が5%を下回ることが賃金の上昇を引き起こすとの考えを示している。また、同総裁はインフレ率が2-3%上昇の物価目標を持続的に達成するには賃金が現在の2倍の3%を超えるペースで上昇する必要があると指摘している。

 最新の7月失業率は4.6%と、6月の4.9%を下回り、9カ月連続で低下(改善)し、09年以来12年ぶりの低い伸びとなった。ただ、豪連邦統計局では7月の失業率低下はロックダウンを受け、仕事を探すことをあきらめ、労働市場から撤退した人を失業者に含めておらず、雇用市場の改善の兆候とは言えない、と慎重だ。このため、市場ではRBAがワクチン接種の拡大を待って、景気をV字回復させることにより、賃金と期待インフレの上昇を目指し、雇用市場を過熱化させるハト派スタンスを維持するとみている。

 現在、ワクチン接種は成人全体の38%超で、現行ペースだと11月上旬までに70%に達する。また、ロックダウンにより賃金上昇率が市場予想を下回り、インフレ上昇が見込めない状況のため、24年まで利上げしないというRBAの方針は依然有効とみている

 次回会合は10月5日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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