米2月中古住宅販売件数、前月比7.2%減の年率602万戸―市場予想下回る

経済

2022/3/22 9:24

<チェックポイント>

●住宅ローン金利上昇と価格高騰、供給不足で販売件数急減

●住宅価格は前年比15%上昇の35万7300ドル―過去最高値に接近

●未販売住宅(在庫)は前月比2.4%増―7カ月ぶり増加も過去最低水準続く

 NAR(全米不動産業協会)が18日発表した2月中古住宅販売件数(季節調整済み)は、前月比7.2%減の年率換算602万戸と、1月の同6.6%増から減少に転じ、市場予想の610万戸を下回った。21年8月(599万戸)以来6カ月の低水準となった。一方、前年比も2.4%減となり、7カ月連続で前年水準を下回った。

 NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、「住宅ローン金利とインフレの上昇、住宅価格の高騰が消費者の貯蓄に打撃を与え、多くの消費者が購入できなくなった」と指摘。ただ、今後については、「需要が冷え込み、住宅建設が増えることにより、住宅供給がいくらか改善するにつれて、住宅価格の上昇ペースは鈍化する」と予想している。

 住宅供給の過不足感を示す2月時点の未販売住宅(在庫)は、前月比2.4%増(前年比15.5%減)の87万戸と、1月の同3.4%減から7カ月ぶりに増加したものの、過去2番目に低い水準。また、2月の販売ペースで換算した在庫水準は1.7カ月分と、1月の1.6カ月分を上回り、6カ月ぶりに増加したが、依然、過去最低に近い水準だ。

 中古住宅の販売ペースをみると、販売物件が2月中に市場に残っていた期間は18日間と、1月(19日間)や1年前の20日間を下回り、依然、過去最短に近くなっている。2月中に販売された物件のうち、全体の84%(1月は79%)が市場に出てから1カ月弱で販売されており、中古住宅の購入のための入札が激化しているため、すぐに売り切れる状況が続いている。

 地域別販売件数は、全体の4割以上を占め、最もウエートが大きい南部が前月比5.1%減(前年比3%増)の279万戸と、1月の急増から減少に転じた。北東部も同11.5%減(同12.7%減)の69万戸、中西部も同11.3%減(同1.5%減)の133万戸、西部も同4.7%減(同8.3%減)の121万戸と、全地区で減少した。

 住宅価格は中央値で前月比2.1%上昇の35万7300ドル、前年比は15%上昇と、21年6月の過去最高値(36万2800ドル)に近い水準となっている。主力の一戸建ても同様で、2月は前年水準より15.5%高い36万3800ドルとなった。在庫不足を反映し、不動産仲介業者が中古住宅の買取り価格を競り上げていることが住宅価格高騰の要因。ヤン氏は、「住宅ローンの利上げと持続的な価格上昇という二重苦となっているため、住宅の手頃な価格が引き続き今後の大きな課題となっている」と指摘する。

 住宅価格が低下しないもう一つの要因として、格安なフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件やショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件などのディストレスト物件の供給が依然細っていることがある。2月のディストレスト物件の販売比率は1%弱と、1月や1年前と変わらなかった。

 一方、手ごろな価格帯の住宅供給不足と住宅価格高騰を反映し、2月の新規住宅取得者の比率は29%と、1月の27%から上昇したが、1年前の31%も下回った。

 市場では住宅ローン金利がすでに約3年ぶりの高水準にあるが、今後、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ開始によりさらに上昇する見通しや、在庫不足による住宅価格の高騰で住宅購入者のアフォーダビリティ(住宅取得能力)が低下し、住宅販売が鈍化する懸念があるとみている。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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