<新興国eye>タイ中銀、政策金利0.50%を据え置き―15会合連続

新興国

2022/3/31 11:19

 タイ中央銀行は30日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を過去最低水準の0.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は20年の2月会合で政策金利を0.25ポイント引き下げたあと、3月20日の緊急会合で、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の悪影響によりタイ経済のリセッション(景気後退)懸念が強まったとして、追加で0.25ポイント引き下げた。その後、5月に20年で3回目となる利下げを実施したが、20年6月に現状維持に転換。今回で据え置きは15会合連続となる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、政策金利を据え置いたことについて、「(ロシアによるウクライナ侵攻に伴う)対ロ制裁の影響にもかかわらず、タイの景気回復は22年と23年も打撃を受けないと判断している。インフレ率も22年は平均で物価目標の許容範囲(1-3%上昇)を超えるが、23年初頭には低下し、物価目標に戻る」とした上で、「(需要拡大によって引き起こされる)デマンドプルのインフレ圧力は抑制されたままだ。持続的な景気回復を促進するため、政策金利を現状通りとすることを決めた」と強調している。

 オミクロン株の経済への影響については、「感染拡大の波は以前よりも抑えられる」とし、ウクライナ情勢の影響についても、「西側諸国の対ロ制裁はコモディティ(国際相場商品)の価格を押し上げたが、タイ経済の回復軌道を変えることはない」とした。ただ、タイ経済の成長率見通しを22年は3.2%増、23年は4.4%増と予想し、21年12月の前回予想(それぞれ3.4%増と4.7%増)から下方修正している。

 インフレ見通しについては、「22年のインフレ率を4.9%上昇、23年を1.7%上昇と予想している」とし、22年が物価目標や21年12月の前回予想(1.7%上昇)を大幅に上回るとした。また、短期的には、「22年の4-6月期と7-9月期のインフレ率はエネルギーと食料品の物価上昇により、一時的に5%上昇を超える」とした。一方、「エネルギー価格の上昇は持続せず、23年にはインフレ率は物価目標のレンジ内に収まる」との見方を示している。

 今後の金融政策については、「物価の安定を維持し、持続可能で潜在的な経済成長を支援し、金融の安定を維持することを目的とした金融政策の枠組みの下で、景気回復を支援することに重点を置いている」とした上で、「経済の見通しに影響を与える、コロナ感染拡大や世界のエネルギー価格、インフレ高騰に伴う価格転嫁などを注視し、必要に応じ、追加の金融政策措置を講じる用意がある」と前回2月会合時と同様のスタンスを維持している。

 ただ、ピッティ・ディシャタット副総裁は会合後の会見で、「(総需要が供給力を上回る)アウトプットギャップ(インフレギャップ)が縮小し始めれば、政策金利を見直すか検討する」としており、市場では、中銀はGDP(国内総生産)がコロナ禍前の水準に達する23年後半に最初の利上げを実施すると予想している。

 次回会合は6月8日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、

 上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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