投資家の「実際の儲け」を示す「インベスターリターン」、積立投資の広がりを示唆

投信

2022/4/22 9:05

 ファンドへの投資を通じた投資家の「実際の儲け」を測る指標として「インベスターリターン」がある。ファンドのパフォーマンスを表す指標として通常用いられる「トータルリターン」と比較することで、投資家の投資タイミングが良好であるか否か把握することができる。2022年3月末時点のデータを見たところ、パッシブファンドで過去3年間、5年間の投資タイミングが良好であることが確認できた。背景には、積立投資を意識する投資家の増加があると見られる。

 インベスターリターンは、投資家がファンドの売買によって実際に得た平均的なリターンを表す指標である。資金の出入りを加味し、金額加重リターンとも言われる。安値買いや高値売りの投資家が多い場合には高くなり、高値掴みや安値売りの投資家が多い場合には低くなる傾向がある。

 トータルリターンがファンドを一定期間継続して保有した場合のリターンであるのに対し、インベスターリターンではファンドの売買タイミングを考慮する。インベスターリターンとトータルリターンの差(「インベスターリターン」-「トータルリターン」)を「インベスターギャップ」と定義すると、ギャップが大きいほど、そのファンドを良いタイミングで購入している投資家が多いと判断することができる。

 国内ファンド(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF除く)について、モーニングスターのカテゴリー別に2022年3月末時点のインベスターギャップを調べた。具体的には、(1)カテゴリーに属するファンドの同月末時点の純資産残高の合計が1兆円を超える18カテゴリーを対象とし(2)当該カテゴリーごとに、カテゴリー内のアクティブファンド、パッシブファンドの平均に基づくインベスターギャップを過去3年間、5年間、10年間で算出し(3)各期間において、インベスターギャップの「パッシブ平均-アクティブ平均の差」を算出した。なお、カテゴリー「国内中型グロース」は該当するパッシブファンドが存在しないため、最終的には17カテゴリーで集計した。

 (3)で算出したインベスターギャップの「パッシブ平均-アクティブ平均差」を見ると、過去3年間では17カテゴリーのうち16カテゴリーでプラス、5年間では15カテゴリーでプラスとなった。残高の大きな一部カテゴリーにおいてではあるが、過去3年間、5年間ではアクティブファンドよりもパッシブファンドの方が、投資家が良いタイミングで投資し、実際の儲けを実感できていると言える。

 一方、過去10年間で「パッシブ平均-アクティブ平均差」がプラスとなったのは、16カテゴリー(過去10年間で該当するパッシブのない「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」を除く)のうち8カテゴリーに留まった。

 過去3年間、5年間、10年間の違いの背景には、投資家の間でこの数年の間に、パッシブファンドへの積立投資の意識が広がっていることがあると見られる。アクティブファンドへの投資においては、これまで通りのタイミング投資による高値掴みの傾向が残っているのに対し、パッシブファンドへの投資においては、毎月一定額積み立てることで、自ずと投資期間が長期化し、高値掴みを避けて安値でより多くの口数を購入することにより、トータルリターンを上回るリターンを享受している投資家が増えていると考えられる。

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ