<新興国eye>インドネシア中銀、政策金利は予想通り据え置き―預金準備率段階的に引き上げ
2022/5/25 12:08
インドネシア中央銀行(BI)は24日の理事会で、通貨ルピア相場を安定させ、インフレを抑制し、景気回復を支援するため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を引き続き、過去最低水準の3.50%に据え置くことを決めた。市場予想通りだった。
また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も2.75%、翌日物貸出ファシリティー金利も4.25%と、いずれも据え置いた。
ただ、コロナ禍からの経済回復によるインフレ加速を抑制するため、市中銀行(一般的な商業銀行)が中銀に預ける準備預金の法定準備率(SRR)を現在の5.0%から段階的に9.0%まで引き上げることを決めた。引き上げは6月1日から6.0%、第2段階は7月1日から7.5.0%、9月1日から9.0%となる。他方、シャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)の場合、現在の4.0%から6月1日に4.5%、7月1日に6.0%、9月1日に7.5%に引き上げられる。中銀は1月以降、金融システムから200兆ルピアの過剰流動性を吸収しており、今回の預金準備率の引き上げにより、さらに110兆ルピアの流動性を吸収できると見ている。
中銀はコロナ禍が始まった20年2月、景気を支援するため、利下げを再開し、同年7月まで4会合連続で利下げを決めた。国内経済が2期連続でマイナス成長となった11月と21年2月に利下げを実施したが、翌3月会合から据え置きに転じ、これで現状維持は15会合連続となる。
中銀は会合後に発表した声明文で、政策金利を据え置いたことについて、前回4月会合時と同様に、「ロシア・ウクライナの地政学リスクと先進国の金融正常化の加速(利上げ調整)という外部圧力が高まる中、通貨ルピア相場の安定を維持し、インフレを抑制する必要性、さらには経済成長を促進し続ける努力と合致する」とインフレ抑制と景気回復の維持の両方に配慮し、政策金利を据え置いたとしている。
今後の金融政策については、前回会合時と同様、「ルピア相場の安定を維持し、さらなる景気回復を支援するため、ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を最適化する」とし、具体的にはルピア安の阻止のため、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映した動きとなるよう、ドル売り・ルピア買いの市場介入などを含め、為替相場の安定化政策を強化するとしている。
ルピア相場の見通しについては、「ルピア相場は23日時点で4月末に比べ1.2%下落、21年12月末に比べ2.87%下落したが、他の多くの新興国通貨の下落に比べると良好」とした上で、「今後、インドネシア経済の良好なファンダメンタルズ、特に経常収支赤字の減少と企業からの外貨の持続的な供給に支えられ、ルピア相場の安定が維持される」と楽観的な見方を示している。
足元のインフレは、4月CPI(消費者物価指数)が前年比3.47%上昇と、3月の同2.64%上昇から加速したが、中銀は今後のインフレ見通しについて、前会合時と同様、「インフレは抑制されており、経済の安定を支えている」とした。ただ、リスクについては、「世界的なコモディティ(国際相場商品)相場の上昇に伴い、インフレ圧力が続き、インフレ期待を高めるため、今後、インフレの安定に必要な措置を講じていく」と警戒感を示した。その上で、「政府との政策協調を通じ、22年のインフレ率を3%±1%の物価目標内にとどめることを目指す」とした。
景気の見通しについては、「国内経済は引き続き、強い内需と輸出に支えられている。第1四半期GDP(国内総生産)は前年比5.01%増と、前四半期の同5.02%増の回復の勢いを継続。第2四半期も改善を続けている」とした上で、「22年の成長率は4.5-5.3%増となる」と前回会合時の見通しを据え置いた。
次回会合は6月22-23日に開かれる予定。
<関連銘柄>
アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>
提供:モーニングスター社
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