上場唯一のベトナム人トップのハイブテクノ、オフショア開発に強み―チャン バン ミン社長に聞く

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2022/6/24 8:45

 日本とベトナムに豊富な人的リソースをもち、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進サービスをオフショア開発型で提供するハイブリッドテクノロジーズ<4260>が好調だ。採用戦略の奏功などにより、22年9月期第2四半期累計(21年10月-22年3月)の連結業績は、売上収益10億5114万円(前年同期比41.5%増)、営業利益1億2199万円(前年同期は2862万円)と大幅増収増益で着地。また、顧客からの需要が根強いことに加え、ベトナムにおける新型コロナウイルスの感染が収束に向かい経済活動の制限が解除されてきた状況を受け、22年9月期の連結業績見通しを上方修正した。チャン バン ミン社長に現状を聞いた。

 ――売上の9割超を占めるストックサービス(準委任契約に基づき、要件定義・設計・実装・テストのサイクルを繰り返し行う開発サービス)のKPI(重要業績評価指標)である年次平均件数(以下、件数)はコロナの影響を受けた21年9月期も含め増加基調を維持。一方、サービスの年次平均単価(以下、単価)は21年9月に大きく落ち込んだものの、22年9月期第2四半期累計では下落分の約半分を取り戻している。

 「19年9月期、20年9月期の件数はそれぞれ31件、41件と件数自体は少なかったが、当社の大株主でもあるエアトリ<6191>が大口顧客だったこともあり、単価はいずれの期も300万円台と高水準だった。21年9月期は中堅・中小企業の顧客開拓に力を入れ件数が57件と大幅に伸びた一方、単価は221.3万円と大きく低下した。コロナの影響で大口顧客が減員体制となったことで単価は落ち込んだが、顧客基盤の拡大という成果が得られた」

 「22年9月期は上半期ベースで件数62(通期計画67)、単価267.9万円(同270.5万円)と盛り返している。上方修正した計画は十分に達成できると考えている。また、21年末に上場したことで、開発工程の上流を担うコンサルタント、開発プロジェクトを管理するプロジェクトマネージャーなど日本人の高単価人材の採用を増やせたことは大きい。彼らのプロジェクトマネジメントが単価向上につながり、再び300万円台回復も可能だ。当然、件数も増加基調を堅持し、業績成長を加速していく」

 ――22年9月期業績見通しを上方修正、売上収益22億7414万円(前期比33.6%増)、営業利益2億4783万円(同2.2倍)となっている。自社の強み・競争優位性をどう考えているのか。

 「日本企業のDX市場は30年には3兆円規模に達すると見込まれているものの、労働生産人口の減少やコロナ禍で進んだリモートワークなどもあって、DXを推進する人材・パワーが不足傾向にある。こうした中、当社は顧客のDXを推進するためのソフトウェア開発を軸に、上流から下流の工程を一気通貫で提供するハイブリッド型サービスを展開している。日本人プロジェクトマネージャーが開発工程の上流で顧客にコンサルティング提案し、合意に基づいた要件等の内容を、日本在住のベトナム人エンジニアが、開発拠点であるベトナム子会社のエンジニアに的確に伝え、そのベトナム子会社の現地エンジニアがアプリなどの作り込みを行う」

 「ベトナムが当社の開発エンジンとなることでローコストオペレーションが活き、21年9月期は減収でも営業増益を確保できた。ベトナムでオフショア開発を行う企業は何社かあるが、私のようにベトナム人が社長を務める上場企業は当社だけだ。オフショア開発にありがちな日本人社員とベトナム人スタッフとの言語や文化の壁、コミュニケーションロスがない点が当社の競争優位性だ。IT業界の人材流動化は大なり小なりあると思うが、上場を機に当社のような特色を好む優秀な日本人の高単価人材が加わってくれた。ベトナムでは当社の知名度は高く、SNSなどの活用により現地では2万人超のエンジニア候補者とコミュニケーションが取れている。今後の業績拡大ペースに合わせて、こうした候補者の現地社員登用なども考えていく」

 ――足元は業務提携などアライアンス戦略が積極的だ。

 「3月に建設・不動産業界のDX推進を通じて当社と事業シナジーが生まれると考えた2社と業務提携契約を締結した。一方、スタートアップ企業のDX支援と事業拡大を目的とした支援プロジェクト『ハイブリッドテクノロジーズ・キャピタル』も3月に立ち上げた。出資によって支援先の株式を取得するとともにDX開発も当社がサポートし、互いに事業成長を目指していく試みだ。いずれも事業シナジーの創出を主眼に置いており、まだ今期業績計画に算入する段階ではないが、中期的にはアライアンス戦略からレベニューシェアなど何らかの収益を生み出していきたい」

提供:モーニングスター社

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