米6月中古住宅件数、前月比5.4%減の年率512万戸―市場予想下回る

経済

2022/7/21 10:22

<チェックポイント>

●住宅ローン金利上昇と価格高騰、供給不足が販売抑制

●住宅価格は前年比13.4%上昇―41万ドル台乗せで過去最高を更新

●住宅供給(在庫)は前月比9.6%増でも依然低水準

 NAR(全米不動産業協会)が20日発表した6月中古住宅販売件数(季節調整済み)は前月比5.4%減の年率換算512万戸と、5月の同3.4%減に続いて5カ月連続で減少し、市場予想(538万戸)を下回った。前年比も14.2%減となり、11カ月連続で前年水準を下回った。

 NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、前回発表と同様に、「住宅ローン金利と住宅価格の両方が短期間で急激に上昇しており、アフォーダビリティ(住宅取得能力)の悪化が潜在的な住宅購入者に引き続き打撃を与えている」と指摘した上で、「CPI(消費者物価指数)が上昇し続ければ、住宅ローン金利は上昇する。金利はインフレがピークに達した兆候が現れたときに安定し、インフレが抑制されれば、住宅ローン金利は低下する」としている。

 住宅供給の過不足感を示す6月時点の未販売住宅(在庫)は、前月比9.6%増(前年比2.4%増)の126万戸と、5月の11.7%増に続いて4カ月連続で増加。21年の88万戸や20年の106万戸を上回った。また、6月の販売ペースで換算した在庫水準は3カ月分と、5カ月連続で上昇。5月の2.6カ月分や1年前の2.5カ月分も上回ったが、依然、低水準。適正水準とされる5-6カ月分を大きく下回っている。

 地域別販売件数は、全体の4割以上を占め、最もウエートが大きい南部が前月比6.2%減(前年比14.1%減)の226万戸と、5カ月連続で減少。南部に次いで大きい西部も同11.1%減(同21.3%減)の96万戸と、100万戸の大台を割り込んだ。中西部も同1.6%減(同9.6%減)の123万戸となった。対照的に、北東部は同横ばい(同11.8%減)の67万戸となっている。

 住宅販売の減少の最大の理由は、住宅ローン金利の急上昇と住宅価格の上昇が続いていることだ。6月の住宅価格(中央値)は前月比1.9%上昇の41万6000ドルと、5カ月連続で上昇。1980年代の統計開始以降、初めて40万ドル台に乗った5月を上回り、過去最高値を更新中。前年比は13.4%上昇となり、124カ月連続で前年水準を上回っている。主力の一戸建ても同様で、6月は前年水準より13.3%高い42万3300ドル(前月比1.9%上昇)となった。在庫不足を反映し、不動産仲介業者が中古住宅の買取り価格を競り上げていることが住宅価格高騰の要因にもなっている。

 住宅価格が低下しないもう一つの要因として、格安なフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件やショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件などのディストレスト物件の供給が依然細っていることがある。6月のディストレスト物件の販売比率は1%弱と、5月から変わっていない。

 一方、手ごろな価格帯の住宅供給不足と高水準の住宅価格を反映し、6月の新規住宅取得者の比率は30%と、5月の27%を上回ったが、1年前の31%や過去平均の40%を下回っている。

 市場では、すでに13年ぶりの高水準にある住宅ローン金利は今後、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ継続により、さらに上昇する見通しや、在庫不足による住宅価格の高騰で、住宅購入者のアフォーダビリティが低下し、今後数カ月、住宅販売の急激な鈍化が続くとみている。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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