英中銀、賛成多数で0.50ポイント利上げ―27年半ぶりの大幅利上げ
2022/8/5 8:55
<チェックポイント>
●22年10-12月期からリセッションに入りと予想
●インフレは10-12月期に前年比13%超上昇でピークと予想
●早ければ9月末から保有国債売却へ
BOE(イングランド銀行、英中銀)は4日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を0.50ポイント引き上げて1.75%とすることを8対1の賛成多数で決めたことを明らかにした。市場予想通りだった。利上げは6会合連続。0.50ポイントの大幅利上げは95年2月以来27年半ぶりとなった。
9人の政策委員のうち、0.50ポイントを支持した8委員にはこれまでハト派(景気支援重視の金融緩和派)だったアンドリュー・ベイリー総裁も含まれる。前回の0.25ポイントの小幅利上げではハト派が6人、タカ派(インフレ抑止重視の金融引き締め派)は3人だったが、今回はタカ派が一気に8人に増え、様変わりした。
BOEは、声明文で、「(今回発表された最新の)8月金融政策報告書の中央予測では、短期的にインフレ率が非常に高くなり、23年にはGDP(国内総生産)がマイナス成長となり、その後(24年以降)はインフレ率が著しく低下する」とし、短期のインフレ急加速に対応するため、大幅利上げに踏み切ったとしている。
最新のインフレ見通しについては、「インフレ率は(40年ぶりの高い伸びとなった)6月の前年比9.4%上昇から22年10-12月期には同13%超(前回会合時は11%超))上昇となり、23年も大半を通じてかなり高い伸びが続く」としている。ただ、「その後(24年)、2%上昇の物価目標に達する」と予想している。
タカ派が大幅利上げを主張した理由について、「雇用市場は引き続き逼迫しており、国内のコストと物価に対する圧力が高まっている。(ウクライナ情勢悪化による世界的なエネルギー価格の急上昇など)外部要因による物価上昇が長期化すれば、国内の物価と賃金への圧力がさらに持続するリスクがある」とし、高インフレの長期化と雇用市場の逼迫(賃金上昇とインフレ加速)によるさらなるリスクを考慮したとしている。
景気見通しについては、「3-5月の3カ月間の失業率は3.8%となり、雇用市場は引き続きタイトだが、23年から失業率が上昇する」とした上で、「22年10-12月期から英国経済はリセッション(景気後退)に入り、24年10-12月期まで四半期ごとに(前期比で)マイナス成長が続く」、「22年と23年には家計部門の税引き後実質所得が急減少し、個人消費の伸びはマイナスに転じる」とし、インフレ抑制の必要性を認識しながらも、大幅利上げによるリセッション懸念を指摘している。通年ベースのGDP予測は、22年が3.5%増となるが、23年には1.5%減、24年も0.25%減と、2年連続でマイナス成長になると予想。これを受け、足元でポンドが急落した。
今後の金融政策の見通しについては、「中期的にインフレを持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、必要な措置を講じる。政策金利のさらなる引き上げの規模やペース、タイミングは経済見通しとインフレ圧力に関する判断に基づく」、「より持続的なインフレ圧力の兆候に特に注意を払い、必要に応じて強力に行動する」とし、利上げサイクルの継続を示唆した。
BOEは、次回9月会合で、「これまで買い入れた保有国債の直接売却を開始するか否かについて決定し、早ければ9月末から開始する可能性がある」ことも明らかにした。
今回の会合で発表された最新の8月金融政策報告書によると、成長率は22年7-9月期が前年比2.3%増(前回5月予測も同2.3%増)、23年7-9期は同1.5%減(同2.1%減)、24年7-9期は同0.6%増(同0%増)、25年7-9期は同0.8%増(同0.4%増)と予想。通年ベースでは、22年は3.5%増(同3.75%増)となるが、23年には1.5%減(同0.25%減)、24年も0.25%減(同0.25%増)と、2年連続でマイナス成長となる。
失業率の見通しは、22年7-9月期に3.7%(前回5月予測は3.5%)、23年7-9期に4.4%(同4.1%)、24年7-9期に5.5%(同4.8%)、25年7-9期に6.3%に達すると予想している。
BOEの次回会合は9月15日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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