<新興国eye>ポーランド中銀、2会合連続で金利据え置き―利上げか据え置きで長時間議論

新興国

2022/11/10 11:38

 ポーランド中銀は9日の金融政策委員会で、最新の11月経済予測に基づいた上で、これまでの急速な利上げによる景気後退懸念に配慮し、主要政策金利の7日物レファレンス金利を6.75%に据え置くことを決めた。市場は据え置きか、または0.25-0.50ポイントの利上げかで予想が分かれていた。

 また、中銀はロンバート金利と再割引金利、公定歩合、預金金利もそれぞれ7.25%、6.80%、6.85%、6.25%と、いずれも据え置いた。

 中銀はコロナ禍後のインフレ急加速を受け、21年10月会合で9年5カ月ぶりに利上げに転じ、今年9月会合まで11会合連続で利上げを継続。利上げ幅が計6.65ポイントに達したことからこれまでに利上げ効果を見るため、前回10月会合で据え置きに転じた。これで据え置きは2会合連続となる。

 中銀は声明文で、金利据え置きを決めたことについて、「世界経済の弱体化はポーランドの経済成長の妨げとなる」とした上で、前回会合時と同様、「これまでの大幅な金融引き締めはインフレ率を低下させ、物価目標への収束を後押しする」とし、利上げが行き過ぎで景気が悪化しないよう、これまでの利上げ効果を見守りたい考えを示した。

 また、中銀は、「ロシアのウクライナに対する軍事攻撃の影響と、世界的なサプライチェーンの混乱(といった外部ショック)の持続がコモディティ(国際相場商品)相場を上昇させ、今の高インフレの主な要因となっている」としたが、「国内の鉱工業生産や建設、小売売上高などの月次データは7-9月期GDP伸び率が再び減速したことを示す。今後数四半期はGDP成長率がさらに減速し、経済見通しはかなりの不確実性にさらされている」とし、景気後退への懸念を強めている。

 同国の4-6月期は前年比5.5%増と、1-3月期の同8.5%増から減速、7ー9月期も3期連続の景気減速が予想されている。今回の会合で公表された11月経済予測によると、22年のGDP伸び率は4.3-4.9%増(前回7月予想は3.9-5.5%増)と予想したが、23年は0.3%減-1.6%増(同0.2-2.3%増)と落ち込む見通し。24年は1.0-3.1%増(同1.0-3.5%増)、25年は1.8-4.4%増と予想している。

 また、インフレ見通しは、政策金利が変わらないという前提で、22年は14.4-14.5%上昇(同13.2-15.4%上昇)、23年は11.1-15.3%上昇(同9.8-15.1%上昇)、24年は4.1-7.6%上昇(同2.2-6%上昇)と、いずれも加速(悪化)方向に修正した。中銀はインフレの鈍化は緩やかに進み、24年にようやく1ケタの伸びに鈍化。25年に2.1-4.9%上昇と、物価目標に戻ると予想している。ちなみに9月のインフレ率は前年比17.9%上昇と、26年ぶりの高い伸びとなっている。

 今後の金融政策の見通しについて、中銀は前回会合時と同様、「マクロ経済と金融の安定を確保するために必要なすべての措置を講じる。これには、とりわけ、インフレが上昇し続けるリスクを軽減することが含まれる」とし、追加利上げの可能性に含みを残した。政策金利はインフレ率を下回っているため、利上げ再開の余地があると見られている。

 しかし、市場では今回の会合が異例の長時間の議論となり、利上げ再開支持と据え置き支持で意見が割れたと見ている。このため、中銀は今回の会合でも将来の利上げの可能性に含みを残したが、市場では景気に配慮し、当分の間、利上げの先送り、つまり、金利据え置きの継続を予想している。

 また、中銀は通貨ズロチ相場について、「ズロチ相場の上昇はインフレ率の低下ペースを速める」とした上で、「ズロチ相場が金融政策の方向性と矛盾する場合、為替相場の変動を抑制するため、外為市場で(ズロチ買いの)介入を実施する」としている。

 次回の会合は12月7日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>

提供:モーニングスター社

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