<年末年始特集>2023年「インボイス制度」開始で経理DX加速

株式

2022/12/30 16:07

 2023年10月1日に「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」の開始を控え、株式市場でも注目テーマとして関連銘柄の物色が本格化しそうだ。現在の消費税は標準税率(10%)と軽減税率(8%)が混在しているが、インボイス制度はこの複数税率に対応した、消費税の仕入税額控除の新方式となる。

 「インボイス(適格請求書)」とは、商品の正確な適用税率や消費税額等を伝える書類やデータのこと。消費税は、売上時に受け取る消費税額(売上税額)から、仕入時に支払う消費税額(仕入税額)を差し引いたものが事業者の納税額になるが、新制度の下ではインボイスがなければ仕入税額の控除を受けられず、納税額が大きくなってしまう。今後、仕入税額の控除を受けるには、仕入先にインボイスの交付を求め、保存しておく必要がある。インボイスを交付する側も、交付を求められた場合にはこれに応じなければならず、写しを保存しておかなければならない。

 なお、インボイスを発行できる「インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)」の登録を受けられるのは、消費税の課税事業者のみ。現在、課税売上高1000万円以下の事業者は免税事業者として消費税の納税義務を免除されているが、インボイスを発行できなければ取引相手の税負担が増すため、取引から除外される、値下げ圧力を受けるといった事態も危惧される。フリーランスや個人事業主も多く含まれる免税事業者は、消費税の納税義務が発生するインボイス発行事業者になるか選択を迫られることになる。

 インボイス制度の開始で経理業務の煩雑化が予想される。さらに、2023年末には改正電子帳簿保存法(2022年1月施行)で定められた「電子取引に関する電子データの保存義務化」の猶予期限を迎え、電子取引に係る請求書・領収書・契約書・見積書などの紙保存が認められなくなる。請求業務の電子化など、折からの働き方改革を背景とした経理DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れに拍車がかかりそうだ。

 関連銘柄は、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)の設立発起人に名前を連ねる、クラウド会計ソフト「勘定奉行クラウド」のオービックビジネスコンサルタント(OBC)<4733.T>、経理・人事労務の作業を効率化する法人向けバックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」のマネーフォワード<3994.T>、全国の税理士事務所等に会計ソフトを提供するTKC<9746.T>、企業間の商行為のIT化を実現する「BtoBプラットフォーム」のインフォマート<2492.T>、電子インボイスの送受信およびインボイスの電子化に対応するSaaS型クラウドサービス「MJS e-Invoice」のミロク情報サービス<9928.T>など。

 また、電子請求書発行システム「楽楽明細」や経費精算システム「楽楽精算」のラクス<3923.T>、クラウド会計ソフト「freee会計」のフリー<4478.T>、請求業務を自動化するクラウドサービス「請求管理ロボ」を手掛けるROBOT PAYMENT<4374.T>なども有力だ。

 SBIホールディングス<8473.T>は、グループのSBIビジネス・ソリューションズで企業のバックオフィス支援を提供しており、インボイス制度対応が可能なクラウド型請求書発行システム「請求QUICK」などを扱う。また、AI-OCR(AI技術を活用した光学文字認識機能)のAI inside<4488.T>は、経理業務の電子化を背景に紙の請求書等の文字認識需要が高まりそう。その他、経理・財務含む管理部門や、会計士・税理士含む士業に特化した人材サービスのMS-Japan<6539.T>などにも連想買いが向かう可能性がある。

提供:モーニングスター社

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