<新興国eye>マレーシア中銀、金利据え置き―インフレ警戒緩めず利上げ再開に含み

新興国

2023/1/20 8:56

 バンク・ネガラ・マレーシア(中銀)は19日の金融政策決定会合で、世界景気の後退による自国経済への悪影響を考慮し、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を2.75%に据え置くことを決めた。市場の大方の予想は0.25ポイントの追加利上げだったため、サプライズとなった。ただ、市場では金利据え置きは一時的な利上げ休止と見ている。

 マレーシア中銀は5月会合で、各国中銀がインフレ抑制で利上げサイクルに転換する中、18年1月25日以来、4年4カ月ぶりに利上げに転換。金利水準を世界的な金融危機となった09年当時の2.00%に戻した以降も利上げを継続、前回会合(22年11月)まで4会合連続で利上げした。利上げ幅は計1ポイントに達した。据え置きは22年3月以来、5会合(10カ月)ぶり。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利据え置きに転換したことについて、「MPC(金融政策委員会)はこれまでの政策金利の調整(4会合連続の利上げ)の影響を見ることができる。過去の金融政策が経済に遅れて及ぶ影響を考慮した」とし、景気見通しの下振れリスクを考慮したことを明らかにした。

 中銀は景気見通しのリスクについて、「マレーシア経済の見通しは地政学的緊張(ウクライナ戦争)の高まりや、主要先進国の予想を下回る成長率と急激な金融引き締めなどにより、引き続き、下振れリスクにさらされている」とし、懸念を示している。

 ただ、中銀は今後の金融政策について、「インフレ率の全体指数はここ数カ月の高水準からわずかに緩和したが、コアインフレ率は依然として過去の平均を上回っている。中銀はインフレ圧力を抑制するため、利上げペースは遅くなるが、利上げを続けると予想される」とし、利上げ再開の可能性に含みを持たせている。

 また、中銀は、「引き続き、国内のインフレと持続可能な経済成長に対するリスクのバランスをとるよう、金融政策を調整する」とし、景気にも十分配慮しながら小幅利上げを継続したい考え。

 同国のインフレ率は全体指数が22年1ー11月期で平均3.4%上昇となり、22年7-9月期にピークに達した。コアインフレ率は同期で平均2.9%上昇(前回会合時は2.7%上昇)となっている。しかし、中銀は、「23年にかけて、全体指数とコア指数は緩やかに上昇すると予想されるが、需要とコストの圧力が長引く中で、高水準にとどまる」とし、また、「インフレ見通しに対するリスクは上向き。補助金や価格統制に関する国内政策の変更と世界的なコモディティ(国際相場商品)価格の動向に引き続き大きく左右される」とし、警戒を緩めていない。

 次回の会合は3月9日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ブルサKLC<1560.T>、アセアン50<2043.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>

提供:モーニングスター社

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