<新興国eye>カンボジア、資金洗浄のグレー・リストから脱出

新興国

2023/3/17 8:57

 資金洗浄(マネーロンダリング)に関する金融活動作業部会(FATF)は、2月22日~24日にパリで総会を開催し、カンボジアについて重点モニターの対象国ではなくなったと発表しました。これでカンボジアは、いわゆる「グレー・リスト」から脱出したこととなります。

 FATFは、今年1月にカンボジアに調査団を派遣していました。カンボジアのマネーロンダリング・テロ資金対策の戦略的欠陥対策のためにFATFと合意したアクションプランに沿った改善、具体的には、国際的協力と防止対策のための改正マネーロンダリング・テロ資金対策法の施行、金融機関等のリスク監督、捜査機関の質・量の両面での改善、マネーロンダリングや資産隠匿の捜査と摘発の増加と改善、制裁・罰則に関する法制度の施行等が評価されました。なお、FATFは、カンボジアに対し、さらなるマネーロンダリング対策の強化を求めるとしています。

 FATFは、2019年2月にカンボジアを「戦略的欠陥はあるもののFATFと対応策を策定済の国」に分類しました。この分類は、一般に「グレー・リスト」と呼ばれており、マネーロンダリングの危険性が高い国の分類となっています。カンボジアは、2015年に一度この分類から外れましたが、再びグレー・リスト入りしてしまったものです。なお、グレーの下に「ブラック・リスト」があり、イランと北朝鮮が含まれています。

 FATFは、グレー・リストに入ったカンボジアに対し、さまざまな助言を行うとともに、対策の強化を求めてきました。具体的には、不動産取引・カジノに対する監視強化、金融機関・送金機関に対する監視強化、技術的欠陥に対処するためのマネーロンダリング・テロ資金対策法の改正、マネーロンダリング監視のための体制強化、マネーロンダリングの取締り件数・訴追件数の目に見える増加、国連制裁措置を実施するための法規制・体制強化等を求めてきました。

 カンボジアが改善を積み上げて、グレー・リストから脱出したことは、高く評価されます。しかしマネーロンダリングやテロ資金の技術は、日進月歩で進化しています。また、カンボジアでは、中国からの投資も盛んですが、その資金には様々なものが含まれているとも言われます。また、カンボジアと北朝鮮は、長く友好関係にあり、プノンペンには北朝鮮の大使館も存在しています。カンボジア経済は高度にドル化しているため、ほとんどの取引がドルで行われ、市中にはドル現金が一般に流通していることもマネーロンダリングを行う側にとっては目をつけやすいところと言われます。今後ともFATFと協力しつつ、各種対策を着実に進めていく必要性は高いものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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