(再送)<新興国eye>インドネシア中銀、金利据え置き―欧米の金融不安拡大を懸念、通貨防衛強化へ

新興国

2023/3/17 8:50

 インドネシア中央銀行(BI)は16日の理事会で、通貨ルピアの安定化とインフレ抑制を目指し、また、欧米での金融不安に対処するため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を5.75%に据え置くことを決めた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.00%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.50%と、いずれも据え置いた。

 金利据え置きは市場の大方の予想通りだった。市場ではが中銀が米国と欧州での金融不安が今後拡大し、その悪影響が、特に通貨ルピアに及ぶことを懸念しているため、中銀は現状維持の金融政策スタンスを続けると予想していた。ただ、一部では中銀はいずれ利上げを再開するとの見方もある。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの利上げ効果を見るため、前回2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利を据え置いている。これで金利据え置きは2会合連続となるが、金利水準は依然、19年以来3年ぶりの高水準となっている

 中銀は会合後に発表した声明文で、前回会合時と同様、「今回の(据え置き)決定はインフレとインフレ期待の継続的な低下を確実にするための先制的かつ前向きな措置だ」とした上で、「5.75%の政策金利は23年上期のコアインフレ率が物価目標の前年比2-4%上昇のレンジ内に留まり、インフレ率(全体指数)が23年下期に物価目標に戻ることを保証するのに十分であると考える」とし、これまでの利上げが経済やインフレに及ぼす効果を見守りたい考えを改めて強調した。

 ただ、今回の会合で、中銀は通貨ルピア相場の安定化について、「輸入インフレを抑制し、世界の金融市場の不確実性がルピア相場に及ぼす影響(下落圧力)を緩和するため、ルピア相場の安定化策を引き続き強化する」とし、自国通貨を高目に誘導し、インフレ抑制と同時に、先週末(10日)のシリコンバレーバンクなど米国の地銀や中堅行の相次ぐ経営破綻、さらには前日(15日)のスイス金融大手クレディ・スイスの流動性不足に端を発した金融不安にも対処する考えを強調している。

 市場では中銀が金利を据え置いたことについて、インフレが抑制されていることが背景にあると見ている。2月のインフレ率は前年比5.47%上昇と、1月の5.28%上昇からやや加速したが、コア指数は同3.09%上昇に鈍化している。中銀も声明文で、インフレの現状認識について、「インフレは抑制されており、経済の安定を支えている」との判断を示している。また、インフレの見通しについても、「23年上期のコアインフレ率は2-4%上昇の範囲で引き続き抑制され、全体指数は23年9月から2-4%上昇の物価目標に戻ると考えている」と楽観的に見ている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「景気回復の勢いを維持するため、ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とした上で、「外為市場での介入を通じ、インフレ、特に輸入インフレを抑制するため、ルピア相場の安定化を強化する」とし、ルピア安阻止のドル売り・ルピア買いの市場介入を行う考えを示し、その上で、「引き続き、流通市場でのSBN(短期国債)の売買を通じ、SBNの短期の利回りを引き上げ、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高め、ルピア相場の安定を強化する」としている。

 景気の見通しについては、中銀は、「インドネシア経済は内需と輸出の増加により引き続き力強い。家計部門の消費は引き続き強まることが予想される」とした上で、「23年の成長率は4.5-5.3%増のレンジの上限となる可能性がある」とし、前回会合時の見通しを据え置いている。

 次回会合は4月18-19日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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