<新興国eye>AMRO―地域経済見通し2023発表、カンボジア経済は回復へ
2023/4/28 8:56
4月6日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、ASEAN+3地域経済見通し23年版を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN+3(ASEAN10カ国と日本、中国、韓国)による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。
AMROは、今回の見通しで加盟13カ国の経済が回復傾向にあると見て、GDP成長率見込みを22年3.2%(昨年10月予測3.7%)、23年4.6%(同4.9%)、24年4.5%と予測しました。ASEAN10カ国では、22年5.6%(同5.3%)、23年4.9%(同4.9%)、24年5.2%と見ています。AMROでは、世界的な需要減退と金融引き締めに対してこの地域は耐久力があるとしています。中国の回復にも支えられて、観光の回復と域内の貿易拡大により、欧米の需要減退を緩和できると見ています。物価上昇率(13カ国)も、22年の6.5%から、23年4.7%、24年3.0%と低下するとしています。
カンボジアについては、成長率を22年5.0%(同5.0%)、23年5.9%(同5.4%)、24年6.7%と予測しています。22年は、製造業の堅調な輸出に支えられて経済は回復したとしています。23年は、世界的な需要減退による輸出の減退が予測されるものの、中国の回復に伴う観光の回復等により成長は加速すると見ています。物価上昇については、22年5.4%、23年3.3%、24年3.1%と落ち着いてくるものと予測しています。
対外収支については、経常収支の赤字(対GDP比)は、21年には45.7%にまで悪化しましたが、22年には32.7%にまで戻しています。また、外貨準備は22年末には178億ドル(輸入の8.4か月分)と非常に安定的なレベルにあるとしています。政府部門は、21年の赤字がGDP比8.5%に達しましたが、22年は5.4%にまで戻しました。日本等の支援もあって、公的対外債務はGDP比35.9%と問題ないレベルに留まっています。
カンボジア経済のリスクとしては、世界的な需要減退、金融引き締め、国際石油価格の高騰、地政学的緊張の高まり等を挙げています。更に、民間向け貸付の増大、特に、中央銀行による金融監督が十分に行われていない不動産開発業者による不動産向け貸付のリスクに警鐘を鳴らしています。
AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。16年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施しています。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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